NY市長は、9月10日から学校での対面授業を実施するとしていたが、9月21日開始に延期しました。どうやら、 United Federation of Teachers という米国内の教員組合団体が、コロナウイルス対策をするように行政府に圧力をかけて、対策がないようならストライキを呼び掛けたとのことです。
8月には、全米各地で教員が対面授業再開計画に抗議しているビデオや写真が報道されていましたね。
さて、米国の学校再開（K-12以下）は実際どうなっかというと、多くの州が学校ごと、校区ごとと、地区保健医療局ごとによるといった対応になっています。カリフォルニア州は、カウンティレベルで再開はバラバラみたいね。ロサンゼルス・カウンティは14日～だったり、22日～だったりするカウンティも多い。 州命令で地域ごとの閉鎖が可能なので、いつでも閉鎖することはできます。
一方で、リモートや対面とリモートのハイブリッドしか許可されていない州は、デラウェア州、ヴァージニア州、ノースカロライナ州のみ。11月中旬まで学校閉鎖が続くのはDC特別区のみで、9月中旬には再開に向けてだいたいは動くみたいね。今のところは。正直、州レベルで状況が違うだけでもわかりづらいのに、更にカウンティレベルで変えられちゃうと追いきれませんし、実態がみえづらくなりますね。
尚、一足先に再開させた大学やカレッジでは、陽性者が多発しています。
ウィスコンシン州では100を超える大学・カレッジ機関から約17000人の陽性者、イリノイ州では約2800名などなど。
大学の感染拡大状況をみて、K12以下の学校では、再開を遅らせる可能性もあるでしょうし、リモートに切り替える可能性も多分にあるでしょう。
育児で働けない保護者が一定数いる
さて、トランプ大統領や共和党はかねてから早期の学校再開をよびかけていました。トランプ大統領は、SCHOOLS OPEN！などとツイートをよくしていましたね。共和党もコロナ追加予算で学校への支援資金として1100億ドルくらいを予算にしていました。さて、なぜ重要なのでしょうか。
これはですね、子どもが自宅待機になることで、労働時間を減らしている親が多いということなんです。ある調査によると21％が労働時間を減らし、7％が離職せざるおえなかったということなんですね。
また、 15歳未満の子供を持つ親を対象としたCare.comの調査（サンプル数1000）によると、保護者の4分の3（73％）近くが、労働時間の変更や労働環境を変化させていくとしています。その中の15％は離職を予定しているとのこと。
つまり、学校を再開しない限り、失業率は高いままになるし、事業主にとってもパートタイムの安い労働力を確保できないということですね。企業を向いている共和党なので、おそらく後者のパートタイムの安い労働力を確保できなくて圧力がかかっているのでしょう。 コロナ禍で企業活動再開した時に、訴訟から企業や学校を守るための免責事項の法整備をしたいのと根っこは同じでしょう。
To that point, 21% of parents said that they had to change or reduce work hours due to changes in school or child care as a result of the coronavirus crisis, according to a new report from Country Financial.
https://www.cnbc.com/2020/09/01/21percent-of-parents-had-to-reduce-work-hours-because-of-remote-school-survey.html
Another 7% of parents had to leave a job altogether.
また、地方自治体として学校を再開させるかという問題とは別に、保護者が学校に通学させたいかどうかという問題もあります。K12までの学校に通わせている保護者の32％はオンラインのみ、34％はリモートと対面のミックス、23％は対面授業を望むとのこと。保護者によっても見解が分かれています。
一方で、民主党員の8割は生徒の感染リスク、教師の感染リスクについて懸念していますが、共和党員ではたった4割。どちらの党員かによって見解が分かれているということもあります。
学校に行けるが、「行かせたくない」という保護者もまたいるわけで、そういう事情も労働時間を減らすことにつながっているのかもしれません。
Among parents with children who will be enrolled in elementary, middle or high school in the fall, 32% say K-12 schools in their area should offer online instruction five days a week, while a similar share (34%) say schools should offer a mix of online and in-person instruction. About a quarter of these parents (23%) say schools in their area should offer in-person instruction five days a week.
https://www.pewresearch.org/fact-tank/2020/08/05/republicans-democrats-differ-over-factors-k-12-schools-should-consider-in-deciding-whether-to-reopen/
学校再開の問題は大統領選挙に直結
この学校再開問題は、大統領選挙（連邦議員選挙）にも、実は直結するのです。
NY州で教員ストライキの圧力をかけたのは、 United Federation of Teachers という米国内の教員組合団体です。そうです、民主党の献金団体には、教員組合団体がいます。強力な政治団体の一つです。 米国の教員組合といえば、 National Education Association（2016年には約2,000万ドル）と American Federation of Teachers （ほぼ1200万ドル） という団体がツートップと思ってよいでしょう。
教師組合の民主党への寄付は、2004年から2016年にかけて430万ドルから3,200万ドル以上に増え、史上最高の額になった。2020年は、8月末時点で2500万ドル。バイデン大統領候補への献金もランキング18位にAmerican Federation of Teachersがランクインしています。
そうです、またここでも、共和党と民主党の利害が出てくるのです。教員がコロナウイルスに感染しないよう、安全を担保できるように政治圧力をかけてくるわけです。
一方で、共和党は企業のために、安いパートタイム労働者を提供したいわけですが、学校が再開しないと母親は働きに出かけられないわけです。
民主党はただでさえ、共和党の3分の1しか資金を保有していないし、一部は借金までしています。そんな状況で、重要な献金団体の意向をくみ取らないはずがないでしょう。民主党にとっては、教員の安全性が確保されるまでリモート授業にしたいはずです。そうなると、保護者は働きに出られずに失業率は高止まりするでしょう。
学校再開の問題、雇用、大統領選挙は密接な関係にあるのです。教師組合が民主党の大きな献金団体の一つであり、選挙前で資金繰りに苦しんでいる民主党としては、妥協できない部分でもあるのです。
参考までにこちらのブログもどうぞ。
コロナ追加対策予算は、もはや選挙後まで法案化できないでしょう。
参考資料
https://edition.cnn.com/interactive/2020/health/coronavirus-schools-reopening/
https://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2020/08/287060.php
https://www.edweek.org/ew/section/multimedia/map-covid-19-schools-open-closed.html
https://www.abc.net.au/news/2020-09-03/trump-insists-schools-open-but-some-parents-fear-coronavirus/12598944
https://www.reuters.com/article/us-health-coronavirus-children/as-u-s-schools-reopen-concerns-grow-that-kids-spread-coronavirus-idUSKCN25G0CS
https://jp.wsj.com/articles/SB11385694663004604302004586539763631755754
https://www.cnbc.com/2020/08/06/lack-of-school-and-child-care-may-push-some-parents-out-of-workforce.html
https://www.usatoday.com/story/news/education/2020/09/01/nyc-doe-school-reopening-delayed-uft-deal/3456239001/
https://www.nbcchicago.com/news/local/coronavirus-cases-spike-on-college-campuses-as-students-return-track-them-here/2333756/