選挙が近いがゆえに妥協できない共和党と民主党

ホワイトハウスと民主党の交渉が継続して、「進展している」という発言がでるものの、妥結には至っていません。8/27(月)の段階で、マコネル上院院内総務は「今週は民主党との話し合いだ」と宣言していたのに、結局のところ、ホワイトハウスのムニューシン財務長官とメドウズ補佐官が民主党指導部と協議して5日ほど経過したと思います。
マコネル上院院内総務とマッカーシー下院院内総務は、ホワイトハウスと民主党指導部の話し合いには不参加で、ホワイトハウスから民主党指導部との協議結果をきいて別で話し合いを進めているようです。

なぜ交渉がうまくいかないのか?
両党の背後に存在している献金団体の利害が衝突しているからです。さらに、選挙が近く、大統領および連邦議員の議席数がかかっているがゆえに、簡単には妥結できないわけです。また、民主党は包括的な法案を望んでいると主張しているので、国民への小切手配布は両党で一致しているにも関わらず、失業給付や免責など隔たりな大きな部分が一向に進まないので法案に至らなくなっています。

つまり、こういう構図になっているということです。

さて、献金団体について。
民主党の最大献金団体は、裁判弁護士団体と言われています。また、労働組合も大きな献金団体です。一方で、共和党は基本的には企業であり、全米商工会議所が大きな献金団体と言われています。

Opensecrets.orgをチェックすると、2年ごとの両党への献金団体上位50位くらい確認ができます。キャプチャは2019-2020年7月までのものです。
Rankの赤は共和党への献金が多いことを示し、青は民主党になります。トランプ大統領への献金が多いことで有名なラスベガス・サンズのアデルソンは、10位と11位に入っていますね。ブラックストーンも共和党支持です。
一方で、民主党については、6位のブルームバーグがランクイン。12、14、15位に組合が並びます。ちなみに、Fahr LLCは、民主党大統領候補に立候補したトム・ステイヤーのファミリーオフィスですが、Union団体 12、14、15位 を合算すると1位になるでしょう。

https://www.opensecrets.org/elections-overview/top-organizations?cycle=2020&view=fc

失業給付600$も与えると労働意欲がそがれるという共和党の主張は正しいか正しくないかの問題ではないのです。だから、そこの議論をしてもあまり意味がありません。

共和党は、あくまで企業の利害を考えての行動です。国民のためではありません。しかも、上院は州の代表という側面もあります。共和党上院の出身州をみると、たいてい田舎州か南部州なんですよ。
時給が高くて(家賃など生活費も高い)、米国経済を牽引しているようなカリフォルニア州、ニューヨーク州から選出されている共和党上院議員はいません。

共和党議員が選出されている田舎州や南部州は時給が低いわけです。そんな状況で600$も政府が上乗せされたら、そりゃあ企業(特に中小企業)が不満がでますよ。

さらには、超党派で考えられる議員も、亡くなったり、トランプ大統領に心底嫌気がさして議員辞職しています。超党派で交渉できる議員も不在です。まとまるのは難しいでしょう。
とはいえ、最後は民主党が妥協するはずです。共和党は内部分裂して20人くらいが1兆ドルの財政出動に反対票を投じるといわれているので共和党が妥協することは極めて難しいでしょう。

ワシントンポストに、共和党戦略家や共和党コメンテーターまでが「もうトランプ大統領は敗退して、共和党上院も過半数議席を失い(下院は共和党が過半数とれないのが既定路線)、一回再構築してやり直せと発言する人が出てきているのが面白いです。

さて、いつ民主党は妥協するのでしょうかね。学校再開の時期はせまっているので、せめて学校へのコロナ対策法案(1000億規模)などについては早い段階で妥結に向かうのではないでしょうか。

参考資料
https://www.rollcall.com/2020/08/03/sides-cite-productive-but-slow-moving-coronavirus-aid-talks/
https://www.washingtonpost.com/politics/2020/07/27/which-party-will-lose-political-fight-if-congress-lets-unemployment-benefits-expire/
https://www.washingtonpost.com/politics/2020/08/03/if-congress-cant-pass-this-coronavirus-legislation-is-it-broken/
https://www.cnbc.com/2020/08/03/is-600-unemployment-boost-a-disincentive-to-work-no-economists-say.html