新型コロナウイルス救済プラン第四弾4840億ドルの予算は、下院にて木曜日に採決される予定。最終的に、民主党が主張していた1000億ドル規模の州・地方政府への財政支援は含まれなかった。医療機関向け財政支援は共和党が譲ったが、ここだけは頑なに反対したようだ。その理由がやっと判明した。財政が苦しいなら連邦破産法の申請を認める方がよいということだ。
米上院共和党トップのマコネル院内総務は22日、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受ける州政府の財政を巡り、連邦政府による支援には反対だとし、連邦破産法の適用申請を認めるほうが好ましいとの考えを示した。
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-usa-states-idJPKCN2243FB
全米知事会は21日、州の歳入不足を補うため5000億ドルの追加支援が必要だとあらためて表明した。2兆3000億ドル規模の新型コロナ対策第3弾では、州・地方政府向けに新型コロナ関連費用に使途を特定した1500億ドルが振り向けられた。
米国では、市(City)や群(County)などの破産は法律で認められている。実際に、有名なところでいくとミシガン州デトロイト市やカリフォルニア州オレンジ郡など破綻したことがある。デトロイト州などは、結局、年金や医療費を削減することで財政再建を果たしたのだ。
デトロイト市は、税収が減ったことで、2013年には、140億ドルの長期負債と3億2,700万ドルの財政赤字を抱えていた。警察官や消防署員を含む市役所職員たちは賃金がカットされ、企業の社員は無給休暇の取得を強いられた。
https://newsphere.jp/economy/20180726-1/
デトロイト市は、債務計画を再編し、70億ドルを削減したことで、2014年12月、破産手続きを完了した。同市は厳格な歳出計画に従うことを強いられた。さらに、バランスの取れた健全な財政を3年連続して計上し、その間にプラス収支を築くことが可能になった。
州政府の支出を再度確認すると、各州の平均をすると、支出の約3割は低所得者層向けメディケイドなのである。州によっては、初等中等教育でも2~3割を占める。州政府の財源が減れば、メディケイドの適応基準が更に下がるか、教育サービスが落ちるかになることは免れないのだろう。教育サービスなんかは、州ごとというより、エリアによっては予算がとれないから美術、音楽などの専任教員を雇えないという話をよく目にする。裕福なエリアは、保護者の寄付で賄えるが、寄付が集まらなければそれらの講義は学校で受けることができないのだ。そういった教育格差がさらに進むことになるだろう。
共和党は、そもそもメディケイドを廃止したいと思っている。なので、州政府を破産させることでメディケイドが実質的に機能しなくなるのは大賛成なのであろう。と、私は邪推している。
一方で、歳入については以下の資料によると3分の1が個人所得課税、同じく3分の1が一般的消費課税って表現しているけどVATのことですよね…?個人所得課税申告は7月まで延期されているし、VATはそもそも営業できていないから税金入ってくるかどうかも疑わしい。どう考えても州政府は厳しいと思われる。もちろん、州の下にぶらさがっている市や群などの地方政府は固定資産税(主に不動産税)に75%頼っているので、家賃収入に頼っている不動産事業者は支払えなくてこちらも猶予になる可能性もあるのだ。
州税は、全体で 7,821 億ドルであり、個人所得課税(約 40%)と一般的消費課税(約 33%) が主たる税収となっている。地方政府税は 5,805 億ドルであり、75%以上を固定資産課税 が占めている。
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/report/material/pdf/h2903/02/2_2.pdf
新型コロナウイルス感染拡大エリアと各州の州知事と議会
米国の感染拡大エリアをもう一度見返してみよう。全米では84万人の感染者がいて、そのうちの25%がニューヨーク州なのだ。
次いで、ニュージャージー州、マサチューセッツ州、カリフォルニア州、ペンシルバニア州、イリノイ州を含めると51万人の感染者になり60%をしめる。
しかも、これらの州は見事に民主党の州知事でもあるのだ。
今後、共和党州知事でもニューヨーク州なみに感染拡大していった場合に、どう対応を変えるのかは興味深いところである。
また、現在の州議会においても感染拡大している上位4週は州知事、州議会も民主党が多数派を占めているのである。
米上院共和党トップのマコネル院内総務が、「州政府は連邦政府ではなく、破産させるべきだ」といえるのも、今だけになるかもしれない。共和党知事、共和党が多数派をしめる州議会などから要請があっても頑なに「州政府は破産したほうがいい」というなら、小さな政府を望む共和党の精神がまだ残っていたことの証だろう。共和党は、すっかりトランプ大統領にのっとられて骨抜きになってしまったと思われていたが、どうなるかこの動きは、今後注視していきたい。