WTI原油価格、天然ガス価格の歪み

今回、石油価格がマイナスに転じたことで、まぁ本当に知らないことが多かった。というわけで、まとめておきたい。
初心者にとっては、いずれの教材も非常に有益だ。どれも簡単ではないが、無料で読めてここまでの情報が拾えるのはすごいことだ。無料で誰でも入手できる情報だと、調べるか調べないかで大きく差がつくのは明白である。

東京商品取引所が出している 商品別取引の基礎知識
経済産業省が出している 「エネルギー白書
独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構が出版している
石油・天然ガスレビュー

WTI原油の歪み

まず、石油価格指標に4つある。WTI原油は、基本的には米国内でしか消費されない地域指標なのだ。エネルギーアナリスト・大場さんによれば、「 WTIの原油ベンチマーク価格としての資格は、これまでも何度も疑いの目を持たれてきた 」とされていて、世界の原油需給を考える上での指数としては実は歪んでいたということだ。なぜこれが世界原油のベンチマークとなっていたかというと、 NYMEXの同市場は、石油先物取引としては世界最大の出来高を有していたからのようだ。しかし、地域特有の理由があったことを忘れてはいけない。ブレント原油やドバイ原油は20ドル/1バレルをキープしていたのに対してWTIだけマイナスに突入したことがそれがよく表している。

https://www.tocom.or.jp/jp/guide/study/textbook/oil/oil4.html

米国内の原油パイプライン

NYMEXの受渡しは、テキサス州に隣接するオクラホマ州(内陸!)のクッシングで行われる。つまり、受渡場所の混雑状況により価格が影響を受けるのです。

クッシング(Cushing)とは、石油輸入施設や石油精製施設が集中するメキシコ湾岸地域と主要石油消費地域である中西部や北西部などをつなぐパイプラインの大動脈を果たす、北米の石油産業の一大中心地(原油貯蔵地)となっているほか、原油先物の指標銘柄であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)の現物の受渡地でもあり、「世界のパイプラインの交差点」とも呼ばれています。

https://www.ifinance.ne.jp/glossary/economy/eco105.html

米国では、この地図のように原油パイプラインが張り巡らされているのだ。

https://oilgas-info.jogmec.go.jp/_res/projects/default_project/_project_/pdf/7/7953/201705_001a_2.pdf

また、2008年まではパイプラインによる原油輸送がメインだったが、オバマ政権時代に鉄道輸送が教科されたことで、パイプラインに次いで、鉄道輸送が大きなウェイトを占めるようになった。ただし、テキサス州エリアから東海岸エリアへの石油輸送は、今でもタンカーが主流である。

https://oilgas-info.jogmec.go.jp/_res/projects/default_project/_project_/pdf/7/7953/201705_001a_2.pdf

天然ガスの指標

天然ガスは、さらに厄介な点があった。石油と異なって、エリアごとに価格決定方式が違うのだ。CMEに上場しているのは、あくまでHenry Hub Natural Gas の先物であることをこれまた留意しなくてはいけない。特にHH価格は、受給の動きで決まるため、HH価格が世界の天然ガス指標だと考えていると、また痛い目にあうことになりそうだ。

https://oilgas-info.jogmec.go.jp/ebook/202003/index.html

天然ガスの主要市場は石油と同じく北米、欧州、アジアですが、価格決定方式は地域ごとに異なっており、石油のように指標となるガスが存在しているわけではありません。アジアにおけるLNG輸入価格は、一般的にJCC(Japan Crude Cocktail)と呼称される日本向け原油の平均CIF価格に、大陸欧州でのパイプラインガスやLNG輸入価格は主として石油製品やブレント原油価格にリンクしています。ガス市場の自由化が進んでいるアメリカや英国では、Henry HubやNBP(National Balancing Point)といった国内の天然ガス取引地点での需給によって価格が決定されています。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2011html/2-2-4.html

アジア向けLNG価格は、 日本向け原油価格が連動するように設計されている。しかし、ヘンリーハブは、米国南部ルイジアナ州にある天然ガスの集積地名であり、ここで売買される天然ガスが先物になっているのである。