2020年2月29日段階で、株式クラッシュしそうな要素をあげてみる。
企業の収益減少は想定範囲内であり、それに伴い、自社株買い減少という可能性がある。ただし、それはあくまで「これ以上は上昇しない」であって、クラッシュではない。
私は海外がお金を引き上げない限り、日本市場がクラッシュすることは基本的にはないと考えている。日本国内でクーデーターが起きたりした政治的なクラッシュが起きない限りではあるが。
①米企業の破産企業が想定よりも増加
格付けによって、デフォルト率というのは織り込まれています。
例えば、BやCCC/Cの低格付けは、7年以内に40~50%がつぶれるのです。AAAについては、0件です。要は、過去の統計範囲内におさまっていれば、デフォルトが起こる分にはいいわけです。問題は、この範囲を超える時です。
米企業は、高い格付けでも債務超過の状態にある企業がけっこうあるようです。要は、債務>資産の状態であっても、キャッシュが入ってくる見込みがあるならそれでOKということらしいです。日本ではあまり許されない状態ですよね。
問題は「キャッシュが入ってくる見込みがある」という前提であることです。つまり、収益の見込みが急激に悪化すると、利払いさえ行えなくなる可能性がでてきます。利払いが行えないなら、何とか調達しなきゃいけませんよね。 さぁ資金調達しなきゃってなると、既にある債務の利払いよりも、新たな借り入れの金利の方が下落してくれないと厳しいですよね。だからこそ、FRBの政策金利が重要になってくるのだと考えています。
そういう中で、社債調達が今週はピタリと止まっていたので、この記事がリリースされた時に相当話題になっていました。かなり異例な状況だと思います。日本市場では、間接金融が主流で銀行が企業に融資しますが、欧米では社債市場の直接金融です(野口先生の受け売り)。
新型コロナウイルスの感染拡大で企業に懸念が広がる中、世界の大手企業が買収や設備拡充など幅広い用途のために資金を調達する2兆6000億ドル(約290兆円)規模の国際社債市場がほぼ停止状態にある。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-02-27/Q6BZ8OT1UM0Y01
投資家が世界的な利回り追求のためほぼ全ての案件に飛びついていた社債市場にとって、これは驚くべき事態の変化だ。欧州の社債発行はこれまでで最も好調な年初スタートを切っていたほか、米国のジャンク(投資不適格級)債発行は少なくとも10年間で最速ペースとなっていた。
更に、デフォルト率が急上昇すると、融資も焦げ付きます。
レバレッジドローン(Leveraged loan)は、欧米において、主に投資適格未満(BB格相当以下)の相対的に信用力が低い企業に対して行われる融資(ローン)のことをいいます。
日銀によると、グローバルなCLO市場での邦銀の保有比率は約15%。昨年起こった金融ストレスチェックによると、日本企業はAAA格級を保有しているから信用収縮が起こっても大丈夫というお墨付きを得ているようです。
これって日本企業が保有するCLOは大丈夫だったとしても、米ヘッジファンドや米保険企業が保有していてクラッシュした場合、その米保険企業と何らかの取引していたり、株式を保有(ETFという保有だったとしても)していたら、連鎖反応しますよね。AAA格級を保有しているから大丈夫というのは、その債権だけを限定してみただけで、米国企業が資金引き上げた時の影響力まではふみこんでいないはず。
レバレッジドローン市場は約1兆4000億ドルに膨らみ、この中でおよそ2000億ドルがユーロ建て、残りはドル建て。ユーロ建てローンの6割前後とドル建てローンの5割強は、CLOとして証券化されている。
https://jp.reuters.com/article/clo-bis-idJPKBN1W90CS
CLOの最大の投資家となっているのは、日米の銀行だ。
銀行のCLO投資は最も返済順位が高いシニアトランシェに集中しているとはいえ、ヘッジファンドや保険会社などの保有パターンは把握が難しい。BISは、このためデフォルト(債務不履行)が増大した場合、銀行も間接的なリスクにさらされる恐れがあるとしている。
やや長くなってきたのでまとめます。
要は、想定外の出来事が起きて、企業のデフォルト率が高まると、社債にも、銀行融資も焦げ付くわけです。
各社がただ焦げ付くだけならいいのですが、社債もレバレッジドローンもデリバティブ化されていて、それを世界各国の金融機関が保有しているんだから破壊力がすさまじいわけです。
このあたりのデータは、プロ以外はリアルタイムで取得できないし、複雑で理解しにくい部分もあるので、出来る範囲でいいからトラッキングしていこうと思います。
② 個人の破産や支払い延滞が急増
米国の1月失業率は3.6%で過去最低を更新している。しかし、コロナウイルス蔓延とともに、製造業の場合はサプライチェーンがやられて工場停止に追い込まれたり、サービス業の場合はサービス休止や販売停止に追い込まれる可能性がある。どれくらい長引くかにもよるが、個人債務を多く抱えている米国では、最低限のクレジット(信用)を支払わないとクレジット・スコアに傷がつく。なので、何がなんでも最低限の支払いをしようとするが、収入が減少したり、収入が途絶えると、それさえもできなくなる可能性がでてくるのだ。
債務で苦しんでいる人は実に多い。年代別の債務をみてみると、60代~70代も多くの債務を抱えているまま引退したり、労働を3つ掛け持ちするなどして何とか債務を返済している生活の人も多い。
で、これらのローンは、消費者ローンの債券を裏付けとして証券化されるわけだ( ゚Д゚) よくあるのは MBS(Mortgage Backed Securities,モーゲージ担保証券) ですが、これらはだいたい証券化されている。もしやと思ったけど、学生ローンのStudent Loan Securitizationも証券化されてるのねw
ただ、住宅ローンの時のように collateralized されていないようなので、状況は違うはず。
③主な感染国である中国、イタリア、韓国、日本の国債CDS急上昇による事実上のデフォルト。
日本も上昇しているが、安倍晋三首相が解散・総選挙に踏み切り消費増税分の使途変更を表明したことを受けて2017年9月には41bpに達していた。 ことを考えると、まだその半分程度なので可能性は小さい。イタリアの方が、欧州全体が打撃を受けそうだ。
新型肺炎拡大への懸念から28日の市場で中国、日本、イタリアの債務保証コストが急上昇した。
https://jp.reuters.com/article/china-health-markets-cds-idJPKCN20M1K1
IHSマークイットのデータによると、イタリアの5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)ITGV5YUSAC=MGは前日終値から22ベーシスポイント(bp)上昇し154bpと、ほぼ6カ月ぶり高水準となった。
日本JPGV5YUSAC=MGは4bp上昇の23bp。中国CNGV5YUSAC=MGは7bp上昇の49bp。ともに8月半ば以来の高水準となった。
尚、CDSが上昇するとどうなるかというのは、ギリシャショックの時を事例にするとわかりやすそうだ。債務削減もデフォルトの範囲に入るのであり、ギリシャについては債務削減に至った。尚、
金融派生商品(デリバティブ)の取引慣行などを決める国際スワップデリバティブズ協会(ISDA)は9日、ギリシャ政府の債務再編がクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の損失補填の支払いが発生する「クレジット・イベント(清算事由)」に該当すると発表した。決定は全会一致。
https://www.nikkei.com/article/DGXNASFL10007_Q2A310C1000000/
ギリシャが国内法に基づいて発行した同国債に付与した「集団行動条項(CAC)」が全ての投資家に元利金の削減を強いることが清算事由に該当すると判断した。ギリシャは同日、同国債を保有する民間投資家の83.5%が債務削減に応じたと発表。参加率を一段と高めるためにCACを発動する構えだ。
CDSはデフォルト(債務不履行)のリスクに一種の「保険」をかける商品。CDSの買い手はデフォルトによる損失をCDSの売り手から補填してもらえる。ISDAの決定に強制力はないが、事実上の世界標準になっている。デフォルト認定を受け、ISDAは19日に清算対象となるCDSの清算価格を入札方式で決定する。
先進国のCDSが清算されるのは初めて。市場で取引されているギリシャ国債のCDSの想定元本は総額32億ドルとされている。清算対象となる銘柄については追って発表する予定だ。
現在の日本国債保有者の半数は、日本銀行だ。銀行、生保も合計すると35%ほど保有している。デフォルトじたいが発生したら、銀行や生保はいくつか破産する可能性があるだろう。