GPIFの外国債券投資

世界最大の年金基金の1つである、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 。運用額は、 168兆9,897億円(2019年度第3四半期末現在) だ。本日のドル円換算で、約1.5兆ドルの運用資金だ。

そのGPIFが11月に資産割合の公表を一時的に取りやめた。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は国内外の債券や株式などの保有額や運用資産に占める割合の公表を一時的に取りやめる。運用目標値を定めた基本ポートフォリオを見直す作業に入っており、市場への影響を配慮した。 (中略)
6月末の構成割合は国内債券26.93%、国内株式23.50%、外国債券18.05%、外国株式26.43%、短期資産5.09%。目標値はそれぞれ35%、25%、15%、25%で、上下に乖離許容幅が設けられている。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-01/Q09O93DWLU6G01

市場では、急激な円安が進んだ要因として、GPIFがポートフォリオを見直して外債投資を増やしたのではないかという憶測が飛んでいる。

市場では「基本ポートフォリオの見直しを進めていた年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、為替ヘッジなしの外債投資を増やした可能性を示唆しているかもしれない」(JPモルガン・チェース銀行)との声が一気に広がった。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-01/Q09O93DWLU6G01

では、なぜゆえにGPIFが外国債券比率を増やすと円安が起きるのだろうか。
GPIFが運用している外国債投資の半分以上は、為替オープンの世界国債インデックスによるパッシブ投資だ。この為替オープンというのは、為替ヘッジをつけない外国債券投資だ。

GPIFが外部委託している外国債投資の半分以上はFTSE世界国債インデックスなどを指標とするパッシブ運用。為替オープンの運用が中心で、指数を構成する米国やイタリア、フランスなどの国債に機械的に資金配分される。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-28/PN9KQ56K50XT01

GPIFは、日本の公的年金制度における年金積立金の管理・運用をしている。私たちは年金を「円」で支払うし、政府も「円」で供給する。つまり、「円」が基軸になっている。しかし、外国債券を買う時は、円建てではない限り、通常はドル建てにするためにドルにする必要がある。 ユーロ建てとかもあるはず。ヘッジがないということは、円安、円高の影響を大きく受けることになる。GPIFの運用規模を考えると、例え全体の1%でも国内債券から外債に変えようとすると、1.68兆円をドルに変える必要がある。10%なら、16.8兆円になるのだ。

米国債を買う際に資金をドルにする必要がありますが、その時点からドル安が大きく進んでしまうと為替変動分の損失が出てしまうため、同時に為替市場ではドル売り円買いのポジションを作り、外債投資の為替リスクをなくしてしまうことを「為替ヘッジ付き」外債投資といいます。オープン外債とは、この為替ヘッジを行わないで外債を購入することを指します。

https://media.monex.co.jp/articles/-/9877

日本の株式市場の1日の売買代金は、約1.5~2兆円だ。しかし、為替市場はドル円だけで8707億ドル(本日のドル円換算で97兆円)となる。GPIF資産の1%程度なら全体の為替ドル円取引量の1%ていどでしかないが、影響がどこまで大きいかは現時点ではわからない。GPIFの最新ポートフォリオが公表された時に、どれくらいドル円が売られたかで影響力の大きさがわかることになるだろう。

今回の調査で判明した世界の為替出来高の絶対値をみると、全通貨ペアの合算で1日平均6兆5940億ドル、ドル円だけでも8707億ドルだった。今年4月の平均為替レートで円建てに換算、年間の営業日数を250日として年間の市場規模を試算すると、全通貨の合計で18京3940億円、ドル円だけでもおよそ2京4300億円と天文学的な数字になる。

https://jp.reuters.com/article/column-daisaku-ueno-idJPKBN1XG0Z8

少し横にそれるが、GPIFはもはや世界最大の年金ファンドではなくなっているようだ。 Social Security Trust Funds という、米国の年金ファンドがGPIFの2倍の運用資産になっている。社会保障局が社会保障税として徴収した資金を運用しているようだ。3位は、米国退役軍人ファンド、4位は連邦職員年金だ。意外なことに、韓国公的年金が第5位だ。
上位10位で5つも米国の公的年金ファンドというのは、昨今の米国株高をうけてなのだろう。トランプ政権が株高にしたい理由が、ここにも表れている気がしてならないと感じる。

https://www.swfinstitute.org/fund-rankings/public-pension