米国では、政党が見解を一致して投票するという動向はあまり見受けられません。政党内で賛成票・反対票を固めるために各議員が動きます。時に団結し、時にそれぞれの議員の判断で動きます。先日の、トランプ大統領弾劾裁判では、弾劾に投票した共和党上院議員(ユタ州)ミット・ロムニーは「神の前に誓い、神が導くままに判断する」と述べています。
トランプ大統領はミット・ロムニーを激しく攻撃しましたが、むしろ攻撃するような大統領の方が珍しいのではないでしょうか。
さて、弾劾裁判では共和党上院議員が一致団結しているように見えていましたが、面白い動きがでてきました。イランに対しての軍事行動で議会承認を義務付ける法案を可決させました。戦争の宣戦布告は議会承認が必要です。しかしながら、宣戦布告さえしなければ、安全保障上の観点からの先制攻撃等は議会承認不要となります。第二次世界大戦後の戦争は、米大統領の権限で軍事介入されてきています。そもそも議会はそれを良しとも思っていなかったでしょうし、ある意味、議会にとっては権限を取り戻す大きな一歩だとも思います。ただし、上院と下院の決議案には乖離があるので、また更に下院で通す必要があるようです。
米上院は13日、c案を賛成55・反対45で可決した。共和党から8人の造反者が出た。
https://jp.reuters.com/article/mideast-iran-congress-idJPKBN2072Y3
決議案はトランプ大統領がイランに対し軍事行動を取る際に議会の承認を義務付ける内容。 (中略)
民主党主導の下院も先月、同様の決議案を可決しているが、全体の3分の2の賛成票は確保できなかった。また、上院と下院の決議案には開きがあるため、大統領に送付するには再び下院で可決する必要がある。
造反者8名は、スウィング・ボ―タ―でお馴染みの Susan Collins (Maine) 、 Lisa Murkowski (Alaska) が入っていますね。今期限りで議員を辞職する Lamar Alexander (Tenn.) も入っています。このメンバーの中で2020年再選挙が迫っている人は Susan Collins (Maine) だけです。再選挙がかかっている議員ほど、保身のためにトランプ大統領に反対しない行動をとっているような気がしています。
That group comprised Sens. Mike Lee (Utah), Rand Paul (Ky.), Susan Collins (Maine), Todd Young (Ind.), Jerry Moran (Kan.), Lamar Alexander (Tenn.), Bill Cassidy (La.) and Lisa Murkowski (Alaska).
https://thehill.com/homenews/senate/482976-senate-votes-to-rein-in-trumps-power-to-attack-iran
また、もう一つ興味深い公聴会が行われました。トランプ大統領は、FRBポストで空いている2議席の指名を行っています。金融緩和推進派を選定していますが、共和・民主両方から疑問視する声が相次いでいます。
FRB理事も、大統領指名だけでは決定せず、上院議員の承認が必要です。そのためには、まずは 銀行住宅都市委員会 ( UNITED STATES SENATE COMMITTEE ONBANKING, HOUSING, AND URBAN AFFAIRS) での承認が必要です。ここで議会に送られなければ、また理事選定は最初からやり直しになるはずです。
米議会上院の銀行住宅都市委員会は13日、トランプ大統領が連邦準備理事会(FRB)理事に指名したジュディ・シェルトン元欧州復興開発銀行米国代表ら2人の公聴会を開いた。共和・民主両議員からは大統領からの独立性や経済を巡る見解などを疑問視する声が相次いだ。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-nominees-idJPKBN2072VB
シェルトン氏はこれまでの著書や発言の中でFRBを鋭く批判してきた人物だが、公聴会ではFRB当局者と協力し、独立性を重んじると強調。「意思決定において独立することを誓う。何をすべきか私に指示する者はいない」と述べた。
トランプ氏によるFRB批判に関しては「人の発言について検閲はしない」と応じた。一方、パトリック・トゥーミー議員(共和党)は、FRBを通じて他通貨に対するドルの価値を管理するというシェルトン氏の見解を「非常に非常に危険な手段」と指摘。
シェロッド・ブラウン議員(民主党)は「シェラトン氏はあまりに多くの問題で立場を変更し、確認もできないほどだ」と批判し、主流派からかけ離れていると指摘した。
上院銀行委員会は共和党議員13人、民主党議員12人で構成。今回の公聴会後、3人の共和党議員がシェラトン氏を巡る懸念は完全には払拭されていないとした。
尚、多数派を占める共和党上院議員は以下の通り。委員会は、委員長(Chairman)の Mike Crapo (R-ID)の裁量が大きいですが、どうなるか。
イランに対するトランプ大統領の軍事行動を制限する決議案に賛同した Jerry Moran (R-KS) が入っています。 上院銀行委員会は共和党議員13人、民主党議員12人で構成されているので、共和党員が2人造反したら、またもやFRB理事指名が見送られるようです。
MAJORITY MEMBERS
https://www.banking.senate.gov/
Mike Crapo (R-ID)
Richard C. Shelby (R-AL)
Patrick J. Toomey (R-PA)
Tim Scott (R-SC)
Ben Sasse (R-NE)
Tom Cotton (R-AR)
Mike Rounds (R-SD)
David Perdue (R-GA)
Thom Tillis (R-NC)
John Kennedy (R-LA)
Martha McSally (R-AZ)
Jerry Moran (R-KS)
Kevin Cramer (R-ND)
また、上院 銀行住宅都市委員会の共和党重鎮上院議員といえば、リチャード・シェルビー上院議員( Sen. Richard Shelby of Alabama )です。彼は、2003年から 上院 銀行住宅都市委員会に所属し、ファニーメイ・フレディマックの国有化、AIG等への公的資金導入など数々の法案を成立させるのに重要な役割を担いました。ハンク・ポールソン元財務長官的には厄介な存在だったようですが。
Mike Crapo委員長は、共和党員には指示されていると自信があるようですが、果たしてどうなることやら。
Federal Reserve nominee Judy Shelton faced a blistering confirmation hearing Thursday, as senators grilled her over her views on central bank independence, the gold standard and whether the money that people deposit at banks should be insured.
https://www.cnbc.com/2020/02/13/trump-fed-nominee-judy-shelton-hammered-by-democrats-in-confirmation-hearing.html
Facing a barrage of criticism over multiple statements she has made over the years, Shelton defended herself as an “outside the box” thinker who would bring her own experience and ideas to the Fed.
“I would look very much forward to working with my colleagues at the Federal Reserve,” she said in response to a question from Republican Sen. Richard Shelby of Alabama on whether she is “an outlier” and “not mainstream” in her thinking. “I have great respect for their capabilities and for their judgment. I think I would bring my own perspective. But I think the intellectual diversity strengthens the discussion and would be welcome.”