日本市場が休場している間に、米国とイランの地政学リスクが高まりリスクオフに傾きました。
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米国は決算シーズンに入ります。今週から来週にかけて、自社株買い自粛期間のブラックアウトに入るでしょう。更に、FOMCが日本時間1/30に控えているので1/17頃から発言を控えるブラックアウト期間に入るでしょう。
イランと米国の衝突で話がもちきりですが、米中貿易についてもトランプ大統領が宣言したとおり1月15日で動いているようです。香港紙からの報道なので、中国政府からの公式な発表ではないのは一応留意しておいた方がよさそうです。
これによると、劉鶴副首相率いる代表団は16日に帰国する予定。当初は今月のもっと早い時期の訪米を計画していたが、トランプ大統領が昨年末に突然のツイッター投稿で、15日にホワイトハウスで合意に署名すると表明したことから、中国側は予定を変更せざるを得なかったという。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-01-05/Q3N85JDWRGG001
同紙によれば、米中とも1月中に第1段階の合意が最終的にまとまると見込んでいたが、トランプ氏が一方的に、習近平国家主席が不在にもかかわらず合意書に署名する意向や日程を表明したのは中国側にとって想定外だった。
もはや、台湾総統選挙の影が薄いが、1月11日に行われる予定だ。
現職の蔡英文総統が優勢なようですが、 対中強硬路線が続くと、中国にとっては嫌でしょうな。
ソレイマニ司令官殺害を受けてから、すでに米国基地に空爆があったようなので、トランプ大統領は更なる報復を何度も宣言しています。
日本時間6日AM10時頃にも、また宣言しています。
トランプ米大統領は4日、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官殺害を受けてイランが米国人や米国の施設を攻撃した場合、イランの施設52カ所を「非常に激しく」攻撃するとツイッターに投稿した。
https://jp.reuters.com/article/iraq-security-idJPKBN1Z404O
(中略)
一方、イラク首都バグダッドでは4日遅く、米大使館などがある旧米軍管理区域(グリーンゾーン)にロケット弾が1発撃ち込まれた。グリーゾーンに近いジャドリヤ地区にも1発、バグダッド北部のバラド空軍基地にも2発のロケット弾が撃ち込まれた。イラク軍によると、死者はいなかった。現時点で犯行声明は出ていない。
TRUMP THREATENS SANCTIONS AGAINST BAGHDAD, SAYS U.S. WILL NOT LEAVE IRAQ UNLESS IT PAYS FOR THE U.S. AIR BASE THERE
— First Squawk (@FirstSquawk) January 6, 2020
まさか、イラク議会が米軍を追い出そうとしているのは意外です。
ISIS討伐などの目的で、5000人が駐留している中で、さらに3000人を増加させる予定です。昨年12月時点で、アフガニスタンには1.4万人の兵士がいるようなので、アフガニスタンを削減してイラクを増強させるつもりなのか。
こうなると、約2万人の米軍がイラクとアフガニスタンに駐留されるのだが、イランにとっては挟まれてしまうので脅威だ。一方で、イラクとアフガニスタンがつながっていないことは米軍にとっても厄介だろう。しかも、シリアはロシア配下にあるし、イランがISISの空白地帯を埋める役割を担っている。
イランとの地政学リスクが高まったがゆえに、トルコは米国に対して大きなカードを引き寄せられるかもしれない。エルドアン大統領あたりは、ほくそ笑んでそうだ。
米国防総省は3日、第82空挺師団から中東に約3000人を増派すると発表した。中東地域で米軍に対する脅威が高まる中での予防措置という。
https://jp.reuters.com/article/iraq-security-usa-middleeast-idJPKBN1Z228L
また匿名の米高官は、レバノンの大使館防衛などに向け、欧州を拠点とする第173空挺師団の一部派遣なども検討されていると述べた。
国防総省は声明で、「米国の国民と施設に対する脅威レベルの高まりに対応する適切かつ予備的な措置」としてクウェートに増派し、予備部隊の再構築を支援するとした。今週発表された約750人の米兵派遣に加わることになる。
さて、イラン革命防衛隊について気になることを少しまとめておく。
大前提ではあるが、イラン革命防衛隊は、イラン国家の軍隊は別物である。とはいえ、完全な別組織かというと、WSJではイラン国軍の一部としている。
ハメネイ師に忠誠を誓う軍隊は約12.5万人。年間10億ドルを周辺国への民兵支援にあてている。まさにこの海外支援部隊のコッズ部隊が今回暗殺されたスレイマニ司令官だったわけだ。
IRGCはイラン国軍の一組織で、最高指導者アリ・ハメネイ師に忠誠を誓う約12万5000人の兵士を抱えている。国内経済でも建設・銀行・通信などの分野で大きな支配力を持っているほか、政府の弾道ミサイル計画を統括している。
https://jp.wsj.com/articles/SB12317017857431743373904585231662685271660
IRGCの精鋭「コッズ部隊」はテロリストを訓練したり中東全域に武器を輸出したりしている。米国務省の推計によれば、IRGCはイラク、シリア、イエメンなどの民兵を支援するため年間10億ドル(約1115億円)を支出している。
イラン革命防衛隊の稼ぎ方は、もはや多岐にわたっていて武器や原油だけではない。ショッピングモールやリゾートなどでも稼いでいる。
同氏はイランの軍事組織イスラム革命防衛隊(IRGC)のエンジニアリング部門である「ハタム・アンビヤ建設基地」の新トップに就任。米国が課す前例のない経済的圧力の影響を和らげることを目指す。同氏は別のIRGC関連企業の責任者として洗練されたショッピングモールやレストラン、ゴルフリゾートなどを建設し、イランの消費者の心をつかんだことで名を成した。今度はIRGCが率いる280億ドル(約3兆円)規模のビジネス帝国で特に高収益をたたきだすハタム・アンビヤを動かし、足元のぐらつくイラン経済を安定させるほか、臆病な外国人投資家が置き去りにしたプロジェクトの空白を埋めようとしている。 (中略)
https://jp.wsj.com/articles/SB11851582932066274603404585416763566387710
IRGCはイスラム革命後のイランの防衛に特化した軍事組織として結成されたが、今や主要な商業勢力として石油、ガス、建設、通信などの分野で優位を占める。モハンメド氏はIRGCの親ビジネス的側面を代表する「顔」だ。
一方で、フォーリン・アフェアーズによるとロウハニ大統領率いるイラン政府は、イラン革命防衛隊を好き勝手にさせているようだ。2018年予算では、革命防衛隊の予算増額をしたり、政府の意向とは異なったとしても革命防衛隊の意向を重視してきたようだ。こうなってくると、イラン革命防衛隊を反政府テロリストと呼ぶことも少し違うような気がする。イラン革命防衛隊が実質的に権力を握って、政府を操っているといった方が正しいのかもしれない。
なかでも注目すべきは、ロウハニが国内での抗議行動の鎮圧を政治・軍事的なエリート集団である革命防衛隊に好きにさせていることだ(革命防衛隊はイラクやシリアなどでの軍事作戦を主導するだけでなく、国内でも暴動の鎮圧にあたってきた)。2017年12月、ロウハニは革命防衛隊のための予算増額を発表することで、この組織の厄介で論争のある活動の抑制を求めてきた国際的圧力を(間接的に)退けたことになる。
https://www.foreignaffairsj.co.jp/articles/201802_vatanka/ (2018年2月号)
(中略)
革命防衛隊が公然と政府の意向を無視する行動をとったときでさえ、ロウハニは体制内の強硬派と歩調を合わせた(例えば、革命防衛隊・諜報部門が多数の二重国籍者を逮捕し、海外投資家たちがこれを警戒して雇用創出のためにロウハニがなんとしても魅了したいイランへの投資を確保するチャンスが遠のくリスクが生じたときも、そうだった)。ロウハニは、5月の大統領選前にテレビで生中継された討論会で、革命防衛隊内の強硬派を含むテヘランの保守強硬派について、「イランの国際的なイメージを損なうギャング紛いの行動をとっている」と批判して、有権者を魅了したが、現実には強硬派への対抗策はほとんどとっていない。
年末から約1週間、イランと米国の衝突をみていて、まさにリトマス試験紙だなぁと感じました。
第三次世界大戦だと騒ぐ人も論外だけど、軽く見過ぎていて「3日で忘れられる」と言い切るのも間違っていると思います。
あと、米国は悪魔の手先だとして非難する人たちもいれば、テロリストを殺害しただけだと勝算する人たちもいましたね。メディアは、米国からの視点を直訳する方向が多いなぁと感じました。
大前提として、米国はプロテスタント国家であり、議会では本議会に先立って牧師による祈祷と忠誠の誓いが宣言されます。” 神の下に一つとなって分かたれず”と誓っているのです。この忠誠の誓いは、この本によると多くの小中学校でも朝礼で宣言されているようですよ。クリスチャンにとって、神によって創造されたクリスチャンを殺めることは、そりゃあテロですよ。
“I pledge allegiance to the Flag of the United States of America, and to the Republic for which it stands, one Nation under God, indivisible, with liberty and justice for all.”
https://americancenterjapan.com/aboutusa/profile/2770/
「私はアメリカ合衆国の国旗と、その国旗が象徴する共和国、神の下に一つとなって分かたれず、全ての人に自由と正義が約束された国に忠誠を誓います」
一方でですね、飯山先生の本によると、コーランでは異教徒を殺害することは聖戦(ジハード)であり、礼拝もジハードもコーランの規定だそうです。
すべてのイスラム教徒が、コーランを読んでいるとは限らないようなので、あくまでコーランに基づいた原理主義はそうなのでしょう。
信仰が違えば、正義が異なることは当然。両方の信仰を理解せずに、解釈しようとする日本メディアはもう無茶苦茶だなと感じます。
それにしても厄介なのは、彼らにとってジハード(聖戦)であるということ。兵士の命を何とも思っていないし、本人は天国行き(しかも数十人の処女に迎えられるという極楽を手にする)だと考えている兵士を相手にすると、泥沼になるということは米国も経験済なはず。開戦宣言なんかしなくても、報復合戦が続けば、そりゃ消耗していくに決まっていますでしょう。
報復合戦が、このまま長引くか、収束していくかは見守るしかないでしょう。
尚、第三次世界大戦はありえないでしょう。
なぜかというと、米国は既に孤立していて、欧州からの賛同を得られていないし、既に各国から非難を浴びています。米議員も戦争は望んでいないようです。
開戦になると、議員に権限があるので、開戦決議はないでしょうな。