下院はウクライナ・イスラエル・インド太平洋支援法案を公開!「21st Century Peace through Strength Act」には凍結されたロシアの資産利用やTikTok法案も盛り込まれる

下院予算委員会から発表されたサマリー資料をもとに、4つの法案をまとめた。4つの法案はそれぞれ別々に土曜日に採決にかけられる予定だ。
先に発表されたウクライナ・イスラエル・インド太平洋支援向けの法案をバイデン大統領は賛同を示している。バイデン大統領と大半の民主党の意見が割れることはほとんどない。イスラエル支援については何の問題もないだろう。ウクライナ支援についても、さすがに過半数は超えると思われる。
なお、4つ目の最後の法案「 21st Century Peace through Strength Act 」については下院民主党・上院民主党・バイデン大統領の支持があるかはまだ不明だ。

①The Israel Security Supplemental Appropriations Act, 2024(総額263億8000万ドル)

イスラエルに関してはほとんどが防衛目的だ。

  • 防空システム「アイアンドーム」および 中・長距離迎撃ミサイル「デービッド・スリング」 40億ドル
  • アイアンビーム防衛システム 12億ドル
  • 対外軍事基金(Foreign Military Financing)を通じてイスラエルに資金提供 35億ドル
  • 砲弾・弾薬の生産・開発強化 10億ドル
  • イスラエルに提供された防衛装備品やサービス補充 44億ドル
  • 中東地域における米軍事作戦を行うための費用 24億ドル
  • 国外に保管されている米国の防衛装備品をイスラエル用に柔軟に提供できるようにする
  • 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金提供を禁止

②THE UKRAINE SECURITY SUPPLEMENTAL APPROPRIATIONS ACT, 2024 (総額608億ドル)

608億4000万ドルが計上されているが、約7割は米国国防総省に割り当てられ、232億ドルが米国の武器、在庫、施設の補充のため。

・ウクライナに提供された防衛装備品・防衛サービスの補充 232億ドル
・該当地域における 米軍事作戦を行うための費用  113億ドル
・防衛システム、防衛装備品、および防衛サービスの調達 138億ドル
・ウクライナに提供された援助および装備の監督と説明責任を継続するための2600万ドル。
・ウクライナへの経済援助 95億ドル
※ローンとして構成。返済条件は大統領が設定。2024 年 11 月 15 日以降に米議会の審査を経て返済免除を行えるが、免除上限額はローンの最大50%。返済は2026年からはじまる。
・パートナーや同盟国に公平な負担を求める

③THE INDO-PACIFIC SECURITY SUPPLEMENTAL APPROPRIATIONS ACT, 2024 (総額81.2億ドル)

共産主義・中国(←と発表資料に書かれている)に対抗するため、東アジア地域で強力な抑止力を確保するための予算

・米潜水艦の保守や維持を目的としたインフラ開発(ドライドッグ建設投資を含)33億ドル
・台湾およびインド太平洋地域の主要な同盟国と安全保障パートナーが中国の侵略に対抗するための対外軍事基金 20億ドル
・台湾および地域パートナーに提供された防衛装備品および防衛サービスの補充 19億ドル
・インド太平洋地域での米国軍強化 5億4200万ドル
・ 砲弾・弾薬の生産・開発強化  1.3億3300万ドル

④ 21st Century Peace through Strength Act

  • ウクライナへの財政支援のため、凍結されたロシア中央銀行などの公的資産をウクライナに移転する権限を行政府に与える(REPO for Ukrainians Act)
    ※3000億ドルのロシアの公的資産が凍結されているが、米国の管轄下にあるのは40~50億ドルしかないことも法案に書かれている。パートナー国と協力して凍結資産をウクライナ支援にまわすよう協議していく
  • Hamas、 Palestinian Islamic Jihad、Al-Asqa Martyr’s Brigade、the Lion’s Denをはじめとしたパレスチナのテロリスト集団とその支援者に対する制裁を義務付ける
  • 戦争犯罪者であるバッシャール・アル=アサドを支持する不正取引関する個人への制裁
  • イラン産原油・石油製品の積み下ろしなど実施した港湾・製油所への制裁
  • ミサイルやドローンの製造に使用されるものを含め、イランへの米国原産品と技術の輸出または再輸出制限
  • 2023年10月に失効した国連の対イラン・ミサイル禁輸措置の対象となる活動に関与する者、イランのミサイルや無人機の供給、販売、譲渡、支援に関与する者に対し、制裁を義務付ける
  • 国際的なフェンタニル密売を国家非常事態と宣言する。米財務省に対し、国際的なフェンタニル密売に関与する国際犯罪組織や麻薬カルテルの主要メンバーの金融資産を標的とし、制裁・阻止するよう指示する
  • 中国の金融機関がイラン産原油または石油製品の購入に関与しているかどうかを定期的に検査し、違反していたら制裁を発動するよう大統領に要請(IRAN-CHINA ENERGY SANCTIONS ACT OF 2023)
  • 行政府はイラン指導者の財政状況について議会に報告する。金融機関に対し、イラン指導者に関係する口座を閉鎖するよう求める
  • ByteDanceに対しTikTokを売却するか、米国内での利用を禁止する法案(PROTECTING AMERICANS FROM FOREIGN ADVERSARY CONTROLLED APPLICATIONS ACT より)
    今回の法案で売却命令がでてから猶予は1年間与えられました。
    こちらは過去ブログ 「TIKTOKを売却するか、米国内での利用を禁止する法案は3/13に下院で採決予定」を参照ください)

参照元:
Cole Releases Series of Security Supplemental Bills
McCaul Releases “21st Century Peace through Strength Act”