米議会3/11-15:残る6つのつなぎ予算期限は3/22/TikTokを売却するか、米国内での利用を禁止する法案は3/13に下院で採決予定

総額4600億ドルの6つの歳出法案を可決!残る6つのつなぎ予算期限は3/22

オレンジでカラーリングしてある部分は、先週から修正しました(※1)

3月8日(金)に上院で可決し、無事にバイデン大統領の署名まで終えました。注目されていた条項も可決しました。 注目したい条項が追加された。
①農地取引を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)に農務長官を参加させる。中国、ロシア、北朝鮮、イランを含む海外による米国内の農地取引についてCFIUS への届出を義務付ける
② 戦略石油備蓄(SPR)の原油を中国に売却することを禁じる。

残り3分の2の年度予算を締め切る歳出予算の期限は3/22。
こちらは以前から交渉が難航しており、民主党が多数党の上院と共和党が多数党の下院で提出された予算には大きな乖離がある。立法府(Legislative Branch)についてはさほど問題ないだろうが、国土安全保障省と労働省の歳出はまだ両党で大きな隔たりがあります。


ByteDanceに対しTikTokを売却するか、米国内での利用を禁止する法案は」3/13(水)に下院で採決予定

3月7日、下院エネルギー・商業委員会は、ByteDanceに対しTikTokを売却するか、米国内での利用を禁止する法案(Protecting Americans From Foreign Adversary Controlled Applications Act)を全会一致で可決した。
スカライズ下院院内総務によると、下院での採決も13日(水)に予定しているとのことだ。

これはTikTokの利用そのものを禁止する法案ではない。 BytedanceがTikTokを売却すれば、何の問題もなく米国内で利用できるのだ。
Protecting Americans From Foreign Adversary Controlled Applications Actは、外国の敵対勢力(foreign adversary)が直接または間接的に20%以上の株式を保有する企業、あるいは 敵国(foreign adversary country)の法が適応される組織・事業(※2) 、または外国の敵対者の指示を受ける企業と定義している。主な内容としては以下のとおりです(※3)

①懸念国の支配下にあり、国家安全保障上のリスクをもたらす特定のアプリケーションを大統領が指定するプロセスを確立
※直近数カ月の月間アクティブユーザーが100万人を超えるアプリ(主にSNS)が対象。つまり月間アクティブユーザーが100万人以下なら対象にならない。
② ①で国家安全保障に対する脅威だと認定された場合、大統領は事業売却命令を出すことが可能になる。売却しなかった場合でも、利用禁止や利用制限を命令できる。
→命令があったとしても、165日の猶予期間がある。
→この大統領の判断に従わない場合、事業主に罰金が科される。
③事業売却に従わなかった場合、アプリケーションの利用禁止とアプリストアでの配布が禁止される。
→とはいえ、既存ユーザーに対して強制措置はとれないと認めている

下院は今週中に採決にかける予定のため可決できるだろうが、上院は審議スケジュールを決める権限をもつシューマー上院院内総務のコメントがないし、まだ上院で賛成に票が集まるかは不明瞭だ。
バイデン大統領も「法案が可決すれば署名する」と発言しているが、「法案が成立するまでは反対する」とも発言している(※4)

ちなみにトランプ政権は、2020年3月にCFIUSの権限を強化し、TikTokの売却を命じ、8月にはTikTokとWechatが関わる取引を米国居住者が行うことを禁止する大統領令に署名した。しかしながら、 これらの禁止措置は大統領権限を越えており、表現の自由を侵害しているとしてバイトダンスおよび利用ユーザーは訴訟を起こした。2021年にバイデン大統領になり、2021年6月には司法省による控訴の取り下げを連邦高等裁判所に求めたというのが簡単な経緯だ。

なお、トランプ氏は2024年3月11日の最新インタビューで「TikTokの禁止は、facebookの力を強めるだけだと懸念を示した」(※5)
共和党議員は必ずしもトランプ氏の意見に従うわけではない。今回は、下院のエネルギー・商委員会で共和党・民主党がともに50名の議員で全会一致をしているので下院としては投票に進めないわけにはいかないだろう。
なお、今回は審議をスキップして規則を停止して即投票に進める特別ルールで対応するので可決するのに3分の2が必要になる。とはいえ、100名を超える議員の反対があるとは思いにくいので下院では可決することになるだろう。

※1:表作成に用いた資料
Appropriations Watch: FY 2024
※2:(1)北朝鮮、(2)中国、(3)ロシア、(4)イランと定義されている。参照元:合衆国法典第10章4872条(d)項
※3:Protecting Americans From Foreign Adversary Controlled Applications Act について参照した記事
Gallagher, Bipartisan Coalition Introduce Legislation to Protect Americans From Foreign Adversary Controlled Applications, Including TikTok
Protecting Americans From Foreign Adversary Controlled Applications Act
※4:Biden says he would sign TikTok crackdown, Trump raises concerns
※5:Trump says a TikTok ban would empower Meta, slams Facebook as ‘enemy of the people’