米議会3/4-9:両党は6つの歳出予算法案に合意!/マコネル上院院内総務トップ引退の影響

今週も年度予算の交渉が続く。2024年度予算が可決していない中だが、大統領の一般教書演説が3月7日夜21時~(日本時間3月8日11時~)合同議会で開催される。いろいろなチャンネルで閲覧できる。詳細はWHのホームページでご確認ください。

年度予算の進捗

まずは先週の振り返り。つなぎ予算の期限がきれる前日、2/29に両下院はつなぎ予算を新たに可決し、翌日には大統領署名を終えたため政府閉鎖は回避された。今回も期限は2つに分けられた。 Commerce-Justice-Science、Interior-Environmentは3/8締切のままとなり、また1週間後につなぎ予算期限を迎える

3/3(日)、シューマー上院院内総務とジョンソン下院議長に加えて、上下院歳出委員会委員長は6つの歳出法案について合意したと発表した

6法案は両党の歳出委員会委員長から発表されているため、可決への見通しは明るい。しかしながら、下院はスピード可決をするため、規則一時停止下で進めると思われる。そうなると3分の2の賛成票が必要になるため、現在の議席数は432議席(空席が3議席)なので、144票の反対が入ると可決できない。
最近の反対投票をみるとだいたい100票程度なので、否決には至らないだろう。

上院歳出委員会・下院歳出委員会から発表された資料をもとに著者作成
昨年度予算については、CRFを参照(※1)

ちなみに、いくつか注目したい条項が追加された。
①農地取引を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)に農務長官を参加させる。中国、ロシア、北朝鮮、イランを含む海外による米国内の農地取引についてCFIUS への届出を義務付ける
② 戦略石油備蓄(SPR)の原油を中国に売却することを禁じる。

②については、2023年1月で下院では既に可決していたものを追加した(※2)
また、共和党としてはFBI予算を前年比▼6%、アルコール・タバコ・火器器及び爆発物取締局▼7%、 EPA(米環境保護庁)▼9%も削減したことを大々的な成果としている。

さて、こうなると問題は3/22期限の予算だ。
こっちは既に交渉難航しており、民主党が多数党の上院と共和党が多数党の下院で提出された予算の乖離がある。立法府については問題ないが、国防費、国土安全保障省、労働省の歳出法案はまだ両党で大きな隔たりがある。

年度予算がなかなか決まらないのは、これらがネックだったのだが果たして3月22日までに決まるのだろうか。
民主党は4月30日までの期限を死守したい構えなので、妥協してくる可能性もある。Fiscal responsibility Act of 2023により、4月30日までに2024年の裁量的支出が予算成立しなければ、2023年度予算から一律1%削減となり、5月1日から適応されるからだ。これは非国防費・国防費ともに影響を受けることになるため、大幅に削減されるくらいなら小さい妥協を許す可能性はあるだろう。
いずれにしろ、4月30日まで時間があるので3/22を超えて交渉を続ける可能性もある。

マコネル上院院内総務は共和党上院の党首引退を発表

2月28日、共和党のマコネル上院院内総務は共和党上院のトップを年内をもって引退すると宣言した。任期は全うすると宣言したため、2026年末まで上院議員を務めることになる。
引退のスピーチでは、旧約聖書から「伝道の書 3 (Ecclesiastes 3:1)」を引用してスピーチしたのが印象的だった。
それにしても、マコネル上院院内総務の上院議員としてのキャリアのスタートは1985年にはじまりReagan Revolutionと共に開始した。そのマコネル上院院内総務の引退は、レーガン時代の共和党終焉を彷彿とさせる。実際、共和党上院議員の側近も 「レーガンの時代は終わり、今はMAGAのトランプ党だ」と発言している(※3)

“As Ecclesiastes tells us, ‘To everything there is a season, and a time to every purpose under Heaven.’
“To serve Kentucky in the Senate has been the honor of my life. To lead my Republican colleagues has been my highest privilege.
“But one of life’s most underappreciated talents is to know when it’s time to move on to life’s next chapter.
“So, I stand before you today, Mr. President and my colleagues, to say that this will be my last term as Republican leader of the Senate.
“I’m not going anywhere anytime soon, however. I will complete the job my colleagues have given me until we select a new Leader in November and they take the helm next January.

https://www.mcconnell.senate.gov/public/index.cfm/pressreleases?ID=EA41ADEE-43E5-47EB-BBE1-0A23B6CBF7C1

マコネル上院院内総務が引退することで、最も懸念されるのは資金調達だろう。マコネル上院院内総務は、上院を多数党にするために莫大な資金調達を実現してきており2015年からSuper PACを通じて約17億ドルも調達している。後継者が同じくらいできるのかということが大問題なのだ(※4)

さて、マコネル上院院内総務の後任はここに書いてある通り総選挙後に上院共和党内で選挙を実施して決める。有力候補は「The Three John」とよく書かれている通り、現指導部で院内幹事 John Thune (SD州) 、共和党会議議長John Barrasso(WY州) 、元院内幹事のJohn Cornyn (TX州)だ。 昨年、上院の党首選挙でマコネル上院院内総務の対抗馬として立候補した親トランプのRick Scott(FL州)も立候補を検討中だとしている。しかし、2022年中間選挙後に行った党内投票では37対10票でScott氏は負けているので当選も厳しいだろう(※5)
ちなみに、 The Three Johnの中で大統領選でトランプを支持した順番としては John Barrasso (1/9)、 John Cornyn (1/23)、John Thune(2/25)という順番だ。いずれもトランプ氏弾劾投票では「NAY」に投票したが、 John Thune院内幹事は一番トランプ氏と距離があるだろう。

それにしても、マコネル上院院内総務が引退宣言をだしたことで、ますますトランプ氏は共和党内で勢力を増すことになるだろう。
スーパーチューズデー後の 3/8には、共和党全国委員会(RNC)の議長選挙も控えている。 トランプ氏の義娘Lara Trumpがトランプ氏から指名されて立候補しており、新議長に就任予定だ。

しかしながら、トランプ氏を中心に団結できるかというとそうとも言いがたく、マコネル上院院内総務をはじめとしたトランプ反対派も少なくとも2026年末までは上院議員を務める。トランプ氏に弾劾を投じたマコウスキー上院議員、コリンズ上院議員は公式に共和党予備選でヘイリー氏を支持すると発表した(※6)
さらに、まだ10数名の上院議員はトランプ氏・ヘイリー氏の支持を控えている状況であり、マコネル上院院内総務もその一人だ。議会襲撃事件以降、 マコネル上院院内総務はトランプ氏と一度も会話していないといわれている。
2024年総選挙で上下院・大統領がすべて共和党のオールレッドになったとしても、団結して取り組める政策はけっして多くはない。少なくとも2026年までの上院は反トランプの上院議員が一定数いることになるのだ。

※1  表作成に用いた資料
Appropriations Watch: FY 2024
Murray, Top Appropriators Release Minibus
Appropriations Committees Release First FY24 Package
Appropriations Committees Release 2024 Government Funding Legislation

※2 H.R.22 – Protecting America’s Strategic Petroleum Reserve from China Act
※3 McConnell exit surprises GOP: ‘It’s Trump’s party now’
※4 The Challenge for Mitch McConnell’s Successor: Bringing In the Big Money
※5 Rick Scott ‘seriously considering’ run for Senate GOP leader
※6 Murkowski, Collins back Haley in GOP primary