1週間の休会を終え、今週から上下院ともに再開する。
今週はつなぎ予算の期限が控えているので、少なくともつなぎ予算を可決しないと政府閉鎖を引き起こすことになる。
新たな予算がないと、なぜ政府閉鎖を引き起こすかというと「Antideficiency Act (1870年立法)」の法律があるからだ。この法律は、議会が予算を承認しない限り、一部の例外(航空管制官など)を除き、各省庁は業務停止が義務づけられているからだ。違反すると、行政罰・刑事罰まで細かく決められている。政府閉鎖は行政機関にとって義務なのだ。
つなぎ予算の期限にどう対応するか上下院で未だ合意なし
下院の投票スケジュールには、つなぎ予算や年度予算に関してたった一行しか書かれていない。これ以上、何も公表できるものはないということだ。
Additional legislative items related to FY 2024 appropriations are expected.
https://www.majorityleader.gov/schedule/weekly-schedule.htm
まず、上院。シューマー上院院内総務は、議員向けに書簡で「政府閉鎖を回避する」との方針を示した。何の法案かまでは言及していないが、おそらくつなぎ予算のことだろう。 加えて、シューマー上院院内総務は共和党下院のせいで政府閉鎖になると共和党下院を非難し、ウクライナ・イスラエル支援を下院で進めるよう再度要請した。
New @SenSchumer letter: “We are mere days away from a partial government shutdown on March 1.” He says it could be “caused by an extreme wing within the Republican Party. pic.twitter.com/VKOjb0lN7M
— Sahil Kapur (@sahilkapur) February 25, 2024
ジョンソン下院議長は23日(金)に、つなぎ予算ではなく、いくつかの予算法案をまとめて進める方針を示した。おそらくこれが具体的な政府閉鎖回避の提案となるだろう(※1)
下院についてはこの方針発表待ちとなるものの、下院が発表したつなぎ予算をそのまま上院が可決するとは思い難い。なので、これが政府閉鎖回避策にはならない。さらには、ジョンソン下院議長は短期間の政府閉鎖が発生する可能性も認めているので、それも視野にいれて下院は進める可能性もありそうだ。また、シューマー上院院内総務の非難をうけて、ジョンソン下院議長は上院を批判しており、非難の応酬に発展している。
Despite the counterproductive rhetoric in Leader Schumer’s letter, the House has worked nonstop, and is continuing to work in good faith, to reach agreement with the Senate on compromise government funding bills in advance of the deadlines.⁰⁰Our position is that of the American… https://t.co/mZ0PFVN9oc
— Speaker Mike Johnson (@SpeakerJohnson) February 26, 2024
つなぎ予算以外にも、上院と下院の足並みはそろっていない。最も大きな問題となっているのは上院が超党派で可決したウクライナ支援だ。ジョンソン下院議長は「国境問題の解決が先だ」として頑なに審議にかけない姿勢を貫いている。共和党下院議員が全員反対しているわけではないので、おそらく投票にさせ持ち込めば$950億のウクライナ・イスラエル等への対外支援法案を上院は可決するはずだが、投票スケジュールには未だ入っていない。 付託解除請願(discharge petition)として、ジョンソン下院議長を迂回して採決に持ち込む方法もあるが、採決に必要な下院議員218名の署名が集まる見込みは今のところない。
年度予算の進捗
11月のつなぎ予算を再度延長する際に、共和党下院は期限を2つに分割した。本当は1つ1つの予算法案を審議して可決させたいわけだが、妥協案としてに分割にした。歳出予算の約20%が3/1に期限切れを迎え、約80%が3/8に期限を迎える。
新たに予算が可決しない場合は、該当する行政機関が閉鎖となる。例えば、農務省関連の予算の期限が切れた場合は農務省関連行政機関が閉鎖となる。
肝心の年度予算の進捗協議は進んでいるが、両党の意見は未だ埋まらない(※2)。
1月上旬にシューマー上院院内総務とジョンソン下院議長は 2024年度の裁量的支出の上限は$1.59兆にすると合意して、そこからスムーズに進むと思いきや、各委員会に$1.59の年度予算が配分されることになるところで交渉難航している。共和党下院議員(主にフリーダムコーカス)の中には、この合意にさえ不満をもっている議員が一定数いるので、共和党内でもまとまりにくい。
今までは、1年近くつなぎ予算を続けて交渉することもあったが、今年は少し事情が異なる。
Fiscal responsibility Act of 2023により、4月30日までに2024年の裁量的支出が予算成立しなければ、2023年度予算から一律1%削減となり、5月1日から適応される。これは非国防費・国防費ともに影響を受けることになる。CBOが1月に発表した具体的な削減では非国防予算は5%~9%、国防予算は0%~1%の幅で一律に削減されると試算している(※3)
現状のつなぎ予算が4月30日まで続いた場合は、民主党の歳出委員長マレー議員によると国防費265億〜365億ドル、非国防費については700億ドルの削減になると警告している。これを引き起こした場合は、数万人の雇用が失われ、 数百万人の低所得の女性や子供たちが給付金を失うことになると警告している(※4)
民主党は上位下院ともに4月30日までつなぎ予算になることを猛反対しているし、ジョンソン下院議長も国防費の一律削減には懸念を示している。一方で、共和党下院議員のフリーダムコーカスは積極的にこの一律1%削減を推進しており、むしろこの法案を提出するよう迫っている(※5)
仮に今回もつなぎ予算で乗り切った場合、4月30日をどう乗り越えるかが次の正念場になるだろう。
参考資料
※1:Lawmakers fail to reach deal with partial shutdown looming
※2:Johnson eyes spending package to avert shutdown, warns GOP not to expect ‘home runs’
その他全般
※3:Implementing the Statutory Limits on Discretionary Funding for Fiscal Year 2024
※4:FACT SHEET: Senator Murray Details Devastating Harm of Speaker Johnson’s Full-Year CR Threat That Would Undercut America’s Economy and National Security
※5:Freedom Caucus pushes Speaker Johnson for full-year CR in absence of policy concessions