米議会10/9-14:下院議長選挙、再び

今週の注目は10月11日の下院議長選挙。上院議会は休会。

上院カレンダー。赤字は本議会休会。

10月4日、マッカーシー下院議長が解任

10月4日にマッカーシー下院議長は、216対210の賛成多数で解任された。そもそもゲーツ議員をはじめとして、このうち5名はマッカーシー下院議長就任時の投票で13回目くらいまでNay(No)に投票していた議員。
RSCからバック議員,Burchett議員、もっと中道派のメイス議員などはなぜ否決したかのか注目された。

まず、そもそもなぜ解任動議にかけられたのか。
それはフリーダムコーカスからの要求を最終的には拒否して、90名を超える共和党議員が反対するなか、政府閉鎖を回避するために民主党と協力してつなぎ予算を可決したからだ。しかも、マッカーシー下院議長に賛成票を入れるために約束した 法案提出(公表)から下院投票までの72時間かけるということさえも反故されて投票にかけられた。
当初から、クリーンなつなぎ予算にはフリーダムコーカスは反対を表明していた。マッカーシー下院議長への支持と引き換えに、下院議長解任の投票提案を1人の議員でも可能にしていたので、まさにここぞとばかりにゲーツ議員は解任動議を提出したのだ(引用元:Rep. Matt Gaetz files motion to oust Speaker Kevin McCarthy, throwing House into new turmoil
史上初ということで話題になったが、そもそも「下院議長解任の投票提案を1人の議員でも可能にしていた」下院規則がマッカーシー下院議長はフリーダムコーカスとの取引でルール設定されたことが史上初だったわけだ。

民主党がどう動くかは直前までわからなかったが、前日にジェフリーズ下院院内総務はマッカーシー下院議長の解任を支持する判断を下した。この判断を下す前に、民主同指導部は会合を設けており、解任を支持してはいけないという声が多かったとのこと(引用元:Jeffries on backing McCarthy ouster: GOP must end its ‘civil war’

まあ1月の下院議長選挙から、マッカーシー下院議長が最適と考える共和党下院議員の多数と、少数のマッカーシー下院議長だけは嫌だという分裂した状態にあったわけで、よくぞ9か月間も維持できたと考えたほうがよいのかもしれない。
ある意味、債務上限問題と2023年政府閉鎖懸念第一弾はマッカーシー下院議長によって回避されたともいえるのだろう。


10月11日の下院議長選挙

現時点では、現下院院内総務のスカリス議員と下院司法委員会のスカリス議員が立候補している。共和党最大のコーカスRSCのハーン議員は議長立候補をしないと表明した。10/9から非公開で会合が開かれ、10/11(水)午前には下院議長投票が行われる流れだ。現在、院内幹事のトム・エマー議員は、次期院内総務を狙っているようで出馬しない意向だ。

少なくとも数回はかかるだろう。さすがに前回のマッカーシー下院議長の議長投票15回ということはない気がする。ジョーダン議員はスカリス議員に議長職を譲るのと引き換えに、さらに重要なポジションを獲得するのではなかろうか。スカリス議員が下院議長に当選すれば、現在の委員会委員長は継続するだろう。

https://www.house.gov/leadership

【1】ジョーダン議員(オハイオ州)※写真左の黄色のネクタイ

ジョーダン議員といえば、なんといってもフリーダムコーカスの創設メンバーであり、アジテーターとして評価が高い。ゲーツ議員はジョーダン議員を自分のメンターだと何度も発言している。
1月の下院議長選挙でもマッカーシー下院議長と当初は争っていたが、最終的にはマッカーシー下院議長に譲った経緯がある。

ジョーダン議員といえば、DON’T FORGET FREEDOMの寄稿を思い出す。
まあ、要は徹底的に政府からの干渉を制限して最小限にしたいと考え、Bill of rights(合衆国憲法修正第1~10条)を何よりも重んじる。大きい政府を嫌うというより、線引きしたはずの政府の権限が勝手に越権行為してくるのを何より嫌う。なので、司法委員会の小委員会である連邦政府のweaponization委員会委員長も務めているわけだ。

また、注目したいポイントとしては
ジョーダン議員はウクライナ支援については実施しないとは発言していないが、その前に国境問題の支援が先だと発言。ただ、何度も「なぜ米国の税金をつかって、ウクライナに支援しなくてはいけないのか?」とは発言している。
一方で、イスラエルにはいち早く支持表明しているが、予算など細かい点には言及していない(引用元:Jordan Statement on the Attacks on Israel

【2】スカリス議員(ルイジアナ州)※写真右の赤いネクタイ

そもそも、現院内総務を務めているので共和党の多くの議員はスカリス議員支持だろう。スカリス議員といえば、石油・ガス業界からの献金上位にいつも入るという印象だ。2022年選挙の時は 石油・ガス業界からの献金第四位だった。

2016年のBBGにはBig Oil’s ‘Rock Star’ in Congressと書かれたほどだ。

基本的にマッカーシー元下院議長を支えてきた共和党指導部の1人なので、マッカーシー下院議長と大きく方針が変わるとは思い難い。ただし、石油・ガス業界とは深いつながりがあるので、今まで以上にESGの攻撃やクリーンエネルギーの攻撃を仕掛けてくる可能性はある。

スカリス議員は、ウクライナ支援のための共和党の評価では、支援に賛成3回、反対に3回投票し、「B」評価を受けている。税金がつかわれていることに対しては精査する必要があると発言している(引用元:https://www.cbsnews.com/news/ukraine-war-house-speaker/

とはいえ、スカリス議員がウクライナ支援についてどう考えていようが、投票にかけるとまた共和党内で分裂することを懸念してそもそも投票にかけない可能性もある。ウクライナ支援については、下院議長がどう考えているかよりも、党内で反対する議員が一定数いるので判断が難しいところだろう。