ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望を読みました。
久々に興奮した一冊。
ペイパルはもちろん知っていたし、使ったこともあるが、ペイパルのビジョンまでは知らなかった。
この世界のすべての人間が、支払い、取引し、生きるためにカネを必要としている。紙幣や硬貨は時代遅れであるだけじゃなく、不便な支払方法だ。落とすことも、なくなることも、盗まれることもある。21世紀の人間には、どこにいても携帯端末やインターネットで手続きできる、快適で安全なカネが必要なんだ。
ペイパルのビジョンは、政府が押し付ける通貨のくびきから世界を解放し、国家の影響がおよばない新しいインターネット通貨をつくるというものだ。
もうここでノックアウト。このとてつもないビジョンこそが、Fintechだよなあ。1999年にPaypalサービス・リリースしていたなんて!
画一性や規律を毛嫌いするようになり、彼はのちに自由主義者になった。
教育機関は19世紀のまま。学生たちをもっと個性的に育て、多種多様な学生が自分にあったペースで学習できるような方法を見つけるべき。
2009年現在リバタリアンである僕らとしては、幅広い国民教育は無駄骨だったと認めざるおえません。
米国はスタフォードなど優秀な大学がある一方で、多くについてはもう無意味だとも指摘している。多額の学生ローンを背負ってまで行くべき価値はないと。
ティールは、米国は多文化社会への歩みをこれ以上進めるべきではないと主張している。
サックスとティールは90年代半ばの段階で早くも「文化の衝突」に言及している。多文化議論は、通常は保守派とリベラルの間、より正確に言うと「怒れる白人の保守派とその他全員」の間で行われるのである。
これ、なるほどなぁと思ったのが、独占して稼いでいるFANGは全然多文化になっていないとデータで示している。グーグルの米国内社員の7割が男性で、そのうち約6割が白人。ヒスパニック系は5.2%、黒人は2.4%。Facebookにいたっては、女性は17%しかいない。
テクノロジー企業こそが、多様性を訴えながらも、多様性とはほど遠いことを指摘している。
独占をめざそう。競争からさっさと身を引き、他社との競争を避けよう。
競争は負け犬がするもの。まわりの人間を倒すことに夢中になってしまうと、もっと価値があるものを求める長期的な視野が失われてしまう。
経済においては競争が利潤を「薄めて」いるというのだ。
独占するということは、営業やマーケティング部は不要になるということです。
マーケティングのおおもとは、戦争がベースだけど、戦争は相手がいるから戦争になるのであって、独占状態であるということは、競争する相手がいないってことだもんね。
この部門にいる人に未来はないな。
もう競争するという環境に身をおくことは、利潤を薄めて、精神的に疲弊させていることになり、一つもいいことはないということだ。
人間は計画を立て、複雑な状況で決定を下すことができます。コンピューターは正反対です。すぐれたデータ処理者ですが、もっとも簡単なことでも決定できません。
会長もよく言っている通り。この発言は、特にわかりやすい。
「今まで私が美味しく作れた朝ごはんを教えて」「みんなに人気がある朝ごはんを教えて」と言えば、即座に過去データや市場データを計算して教えてくれる。
でも、「今日の朝ごはんは、パンとご飯、どっちがいい?」と聞いたら、困ってしまうだろう。
これって株式投資もまさにそうで「この相場の状況で、買った方がいいかな、買わない方がいいかな?」とか聞いたら、「知らんがな」という回答になるだろうね。
トランプの選挙戦は、彼の天才的なセルフマーケティング力と、ツイッターとフェイスブックによる最新の選挙戦術を組み合わせて展開された。選挙後にフォーブスは「伝統的な選挙戦は死んだ」という的を得た分析をしている。テレビのスポットCMや顔写真入りポスターを駆使した選挙戦は、今や振込用紙に記入して送金するのと同じくらい時代遅れだ。
セス・ゴーディンが1990年代から「Traditional Marketing is dead」と発言してるが、やっと結果がでてきたんだろうね。選挙のようにターゲットが広い場合だと、証明されるまでに30年かかっているのか…。
世界の最先進国は途上国に資本を輸出すべきでしょう。しかしアメリカは1年に5000億ドル以上輸入しています。それによってより多くのカネが財政投資に流れ、米国経済はますます銀行や金融部門の方向に偏っていく。それで暴利をむさぼるのはウォール街だ。
ティールは別にラストベルトを米国に戻そうとは一言も発言していない。
ただ、この状態についてはおかしいということは指摘している。
ピーター・ティール氏「私はゲイであることに誇りを持っている」トランプ応援演説で宣言
こっちの演説も参考になる。
パランティアについては知らんかった!
この本の中で、ウォーレン・バフェットとピーター・ティールの逆張り思考による投資法の共通点を見出しているが、そこはあんまり参考にしていない。