マコネル上院院内総務は、2021年度予算にコロナ追加対策予算を追加方針/【米議会基礎知識】米議会での法案成立フロー

マコネル上院院内総務は、2021年度予算にコロナ追加対策予算を追加する方針を示した。 ビックリ。というのも、共和党(というよりもシェルビー上院歳出委員会委員長)は、今まで2021年度予算にコロナ追加対策予算を追加しないで別で予算たてする方針を示していたからだ。現段階ではまだ方針を示しただけである。総額2兆ドルになりそうな年度予算に対して共和党内部でも拒否する議員がでてくる可能性もある。まずはそこをクリアする必要がある。
さらに、ペロシ下院議長が2021年度予算にコロナ追加対策予算を追加するということに何の方針も示していない。 あくまで2兆ドル規模にこだわるなら難しいだろう。このあたりは、ペロシ下院議長の反応を待つしかない。

Senate Majority Leader Mitch McConnell (R-Ky.) said Tuesday that any deal reached on a coronavirus relief package will be added to a year-end omnibus spending bill, which means Senate Republicans will insist on limiting the size of a new coronavirus relief initiative.

引用元:The Hill

予算規模は、秋から提案している5190億ドルにちかいとのことだ。小さな政府を掲げる共和党内メンバーの反発を考えたら、5000億ドルから大きくは動かないだろう。予算のうち大半は、3320億ドルは給与保護プログラム(PPP)の第二ラウンドに利用するようだ。今までは企業につき1回だったので、2回目に使えるようになるなら効果は大きいだろう。
また、個人事業主など通常の州が提供する失業プログラムに含まれていない人達への失業給付( PUA )1ヵ月延長される予定ではある。その一方で、州が提供する失業プログラムへの増額はなさそうな気配だ。

A summary of McConnell’s plan, obtained by CQ Roll Call, suggests it has a number of similarities to a $519 billion package that Republicans offered earlier this fall that Democrats dismissed as “emaciated” relief.
Among the biggest elements of the new package is $332.7 billion for the Paycheck Protection Program, mostly to provide a second round of loans, which are forgivable if employers keep their workers on the payroll.
(中略)
The plan would extend for a month a program that extends unemployment benefits to those who have exhausted them, along with a program that grants unemployment benefits to those who don’t traditionally qualify for them, such as “gig” workers and the self-employed.

引用元:Roll Call

超党派の9080億ドルコロナ追加対策予算は政治パフォーマンス

超党派議員が9080億ドルの新型コロナ追加対策予算を提案したことが注目された。しかしながら、マコネル上院院内総務は2021年度予算にコロナ追加予算を追加するという方針を示しているので単独法案での採決はありえない。珍しく、CNBCがマコネル上院院内総務は拒否しているというヘッドラインで記事を書いてきたが、その通りでしょう。

また、超党派の中でも多数党で誰が入っているかが重要になるわけだが、共和党上院議員からの参加メンバーである4名のメンバー( Lisa Murkowski (R-AK) Susan Collins (R-ME), Bill Cassidy (R-LA) Mitt Romney (R-UT) )をみても、本会議に辿り着けるわけがないと判断できる。
よく共和党案に造反する3人組が入っているのもあるが、委員会経由でいくとしたら歳出委員会委員長のシェルビー議員を入れなきゃ話にならない。あるいは、委員会迂回経路でいくとしたら多数党応手のマコネル上院院内総務を巻き込まなきゃダメでしょ。こんなの政治パフォーマンスですよ。


米議会での議案・決議成立フロー

昨日、PA州の州議会議員が動議決議を出しただけで「PA州は州議会議員が選挙人を決めることになった!」というツイートが出回っていてアレだと感じたので、米議会における議案・決議成立フローを説明したい。

議案を提出できるのは上院議員・下院議員だけ。日本と違って賛同議員を集める必要はなく、1議員の提出でも可能。この議案を提出するというのは、大統領でもできない権限なんですよ。そして、米国では予算もすべて法律として制定必要があります。要は、米議会は連邦政府の財布を握っているわけです。
だからこそ、大統領は毎年一般教書演説で「こんなことに予算を使いたいよ~」と議会に要請しているわけです。あれはあくまで大統領の方針であって、予算の最終決定権は米議会にあります。

引用元:https://americancenterjapan.com/aboutusa/translations/3162/

基本的な議会の承認フローは上記の通り。 各会期(2年間)で、1万~1.5万件の議案が毎年提出されて大統領署名まで辿り着けるのは1%程度。法案や決議案出すのが議員の仕事なんだから、出さなきゃだめですよ。提出したからってたいしたことない。米議会では、委員長が絶大な権限を握っています。委員会に付託された議案の大多数は、 委員会による握り潰し状態のまま議会期末を迎えます。要は、委員長の意向次第なんですよ。

一方で、委員会を迂回させる方法もあります。 本会議に直接上程するための手続もあります。いくつかやり方はありますが、 上院における議事進行責任者 (Floor Leader) は多数党院内総務なので、委員会迂回を選んだとしてもマコネル上院院内総務の意向次第できまります。ただ、本会議で進めようとしてもクローシャー動議決議が必要なんで3分の2が必要になるはず(ここは自信ない)
ただ、FRB理事や連邦控訴裁判所判事承認などは過半数で承認されます。

なので議案成立させるためには、上院多数党院内総務(現在はマコネル)の発言と、常任委員会委員長を追うべきなのです。

常任委員会委員長一覧

委員会経由の議案は、各委員会委員長(あるいはその委員会の小委員会委員長)に委ねられます。小委員会で可決してもその上の委員会でバンされることもあるから、委員会委員長をおさえています。 これが常任委員会委員長一覧です。
要はマコネル上院院内総務や多数党党内の役職付議員と委員会委員長だけみていればいい。それ以外は無視していいわけですよ。

http://www.senate.gov/senators/leadership.htm

特別委員会などは、こちらの米上院議会HPを確認ください。これは116会期の委員長一覧ですが、GA州上院選で共和党多数党が確定すれば、メンバーがけっこう入れ替わる予定です。
共和党は委員会委員長を6年任期と定めています。特にバイデン政権の目玉政策である気候変動対策予算についてはエネルギー・資源委員会委員長が重要になってくるはず。少なくとも、リサ・ムコウスキ議員は任期満了で委員長は引退します。後任は、化石燃料推進派のジョン・バラッソ上院議員が就任するのではないかという話があるので注目ですね。

余談ですが、よく日本のメディアで取り上げられるテッド・クルーズ議員、ミット・ロムニー議員や、造反するスーザン・コリンズ議員も常任委員会委員長に就任していないっていうのはまあ、その程度の人ってことです。
マコネル上院院内総務率いるチームでは、そういう扱いだと思ってニュースを読み解いたほうがいいと思いますよ