バイデン次期大統領(と呼んでいいんでしょうかね)がデラウェア州で演説した際に、「3.4兆ドル規模のTHE HEROES ACTの法案通過すべき」と発言した。この民主党主導の法案は、下院で5月に可決しているわけだが、マコネル上院院内総務やグラム議員は “dead on arrival” した。検討するに値しない予算規模なので即刻却下されたのです。シェルビー歳出委員会委員長も「クリスマスツリーのオーナメントのように盛り込みすぎでしょ(←やや意訳)」と発言していた。
ペロシ下院議長とシューマー上院少数党院内総務は THE HEROES ACTを出発点にしたいと発言していたので、足並みそろえたいという意向もありそうだけど、このタイミングでバイデンが発言したってことはジョージア州上院選対策としか考えられませんよ。
“Right now, Congress should come together and pass a COVID relief package like the HEROES Act that the House passed six months ago,” Biden said during remarks in Wilmington, Del. “Once we shut down the virus and deliver economic relief to workers and businesses, then we can start to build back better than before.”
引用元:The Hill
「来年のジョージア州決選投票前にコロナ追加経済対策予算は可決しない」と私は先日書いていましたが、早くも2021年2月後半~3月初旬に一部限定した予算案だけが可決するという話もでてきているようです。1月中もほぼ無理と考えられているようですね。
The most likely outcome is another stopgap spending bill, perhaps into late February or early March, with some limited bipartisan COVID-19 aid attached. That’s the view of Capitol Hill officials in both parties and other legislative experts.
引用元:Roll Call
先日も書いた通り、マコネル上院院内総務は「5000億ドル規模が望ましい」としています。失業率が着々と改善してしまっているしね。意外なんですが、共和党は雇用統計を重視しているようなので、このあたりも重要でしょう。
一方で、議会からの財政出動が期待できないとなると1300万人が受給しているPUAとPEUCが今年末終了になるため非常に気がかりです。ドイツ銀行は、 PUAとPEUCが なくなることで2021年第一四半期に1500億ドルの所得減少になる試算をだしている。また、何百万人もの人が学生ローンの支払いを一時停止しているが、それも年末に終了する。また、大統領令によって実現している立ち退き禁止も終了となる。
立ち退き禁止については、家主からの訴訟が絶えずあることもあり、カウンティレベルでは実施されるだろうが連邦政府としては難しいだろう。
Allowing the programs to lapse would reduce income by roughly $150 billion in the first quarter for workers whose benefits end, Deutsche Bank senior U.S. economist Brett Ryan estimated.
引用元:WSJ
(中略)
Several other aid programs are set to lapse at the end of the year, including a nationwide eviction moratorium, a suspension of student-debt payments and tax breaks for businesses.
ジョージア州上院選の進捗
ジョージア州選挙は既に過熱してきています。12月7日が有権者登録締め切りなので、18歳を迎える若者に焦点をあてて民主党は有権者登録を促進させているようですね。ジョージア州は白人比率が53%にまで落ち込み、ブラック比率は32%近くにまで上昇。また、ラテン系も5%ほどいます。
今回の選挙に向けて、2018年ジョージア州知事立候補経験があり元ジョージア州議会議員ステイシー・エイブラムス氏をはじめとした有権者登録活動が大きく貢献した。ジョージア州内だけで80万人以上、有権者登録を実現したのだ。 特にデービッド・パーデュ―(共和党)vsオソフ(民主党)は僅差だったので、新たに有権者登録をした若者がオソフに投票すれば共和党は1議席失うことになる。それでも民主党が2議席確保するのはかなり厳しいだろうが、民主党としては1議席でも多く獲得しておきたいところだろう。
それにしても、民主党候補者がドキュメンタリー作家(ユダヤ人移民)のオソフと黒人バプテスト牧師(従軍経験あり)のワーノックで、両方とも地方政府や州政府の議員経験なしで弁護士でもないっていうのがどうもアレに思えます。この二人はどの団体を代表しているのかさっぱりわからないよ。これこそポピュリストだと思うんだけどなあ。現職共和党上院議員のパーデューとレフラーも従軍経験なしのビジネスマンなのでお互い様の側面はあるんですが、それでもこの2人は企業(業界かもね)の代表は果たしていると思いますよ。
すでに両陣営で資金調達が1億ドル突破しているようですが、色んな側面の代理戦争と化しているんですよね。
共和党 vs 民主党
プロ・ライフ vs プロ・チョイス
アンチ・ヘルスケア vs ヘルスケア強化
アンチ・社会主義 vs 社会主義
親イスラエル vs 反イスラエル
反中国共産党 vs 親中国
オソフに対しては、社会主義のレッテルを貼り、中国政府とのビジネス経験などネガティブキャンペーンを仕掛け、ワーノックは反イスラエルと。
一方で、民主党側としては、共和党はヘルスケアを廃止しようとしていると訴え、レフラーとパーデュのインサイダー疑惑を追及し続けていますね。
Jon @Ossoff did business with a company owned by the communist Chinese Government and then tried to hide it from Georgia voters.
— David Perdue (@Perduesenate) November 16, 2020
Georgians can’t trust him to hold China accountable. #GAsen #gapol pic.twitter.com/wrfuDDYLjk
民主党下院議員の分裂はかなり深刻。政策に大きく影響を及ぼすことになる。
民主党は下院議席を大幅に減らして、上院議席も多数党に奪還できなかった。たとえ、バイデン大統領が誕生しても米議会民主党としては敗北しているのだ。
ただし、ジョージア州で2議席獲得できれば副大統領の1票で決まることになるため最後の望みをかけている。しかしながら、現段階で3期連続で多数党を奪還できなかったのは重くのしかかってきている。
何度か書いているが、下院議席は民主党が多数党になりましたね、よかったんでは済まない状況になっているのだ。民主党222議席 共和党213議席になる着地だからだ。たった9票の差しかつけられずに終わってしまった。
民主党内部は、大きく穏健派(moderate)と進歩派(progressive)で分裂している。つい最近では、ジョー・マンチン上院民主党議員が「スゥイング州で選挙にまけたのは進歩派のせいだ」という発言をして内部分裂が話題になった。
プログレッシブ議員は現在100名ほどいて、もちろん4人組の”squad”も入っている。オマール議員が幹事ですかw
2020年総選挙でプログレッシブはさらに勢いをつけているため、穏健派は脅威に感じているわけです。
困ったことに、穏健派は2022年の中間選挙で議席を失うことを懸念し始めたので、大型の財政出動については慎重にならざるおえないような状況だ。
他にもプログレッシブの政策である連邦最低賃金引き上げ、銃規制、移民基準の緩和、石油とガスの水圧破砕とエネルギー探査の制限などは慎重にならざるおえなく、賛成票を避ける可能性があるだろう。
The speaker’s job is all the more complicated because moderates are fearful that Democrats will lose seats in the 2022 midterm elections, considering Republicans have unified control of the process that will redraw district lines in more states than Democrats do.
https://www.rollcall.com/2020/11/16/for-progressives-the-house-is-as-big-a-problem-as-the-senate/
Some moderate Democrats will want to avoid votes on less far-reaching progressive proposals, such as an increase in the federal minimum wage, gun control, eased immigration standards, and restrictions on oil and gas fracking and energy exploration.
こうやって考えると、穏健派の一部が造反して共和党と手を結ぶこともありえるだろう。一度可決してしまっている3兆ドルのコロナ追加対策予算ではあるが、今後もこうした大型追加財政が出てくるかといわれると難しいと思われる。それは、穏健派が2022年選挙で更に座席を減らすことを気にして社会主義的な政策を避けたがるからだ。
この傾向がどのくらい強くでてくるかは、民主党穏健派がどうするかにもよるだろう。民主党内部の穏健派が、プログレッシブで社会主義的な政策・政治信条に飲み込まれていくか、あるいは、造反して共和党と手を結ぶか。どちらかを選択するかによって出てくる財政政策も大きく変わるだろう。
どうしても民主党はプログレッシブが注目されるが、2022年までは穏健派を注視していくほうが今後の流れがみえるのかもしれない。