ギンズバーグ米最高裁判事の死去と2020年大統領選挙

これは選挙前に大きなニュースが飛び込んできた。女性の権利向上と性差別の解消に捧げてきたルース・ベイダー・ギンズバーグ判事(ユダヤ系)が死去した。癌が発覚していたのは報じられていたが、すい臓がんで亡くなった。安らかな眠りにつかれることをお祈り申し上げます。
彼女についての本、映画は多数あるものの、日本ではあまり知られていない。
中絶賛成派プロ・チョイス派の女性には特に人気なのだ。RBGグッズなんていうのもバカ売れしてきた経緯がある。

最高裁前では、彼女の死を悲しみ、続々と人が集まっている。日本だとわからないが、ほんと絶大な人気があった人なのだ。

彼女は、クリントン政権の時に最高裁判事に指名され、上院で承認を得て最高裁判事となった。最高裁判事は終身なので、何か事情があって辞任しない限りその椅子に座り続けることになる。彼女は30年弱いた。トランプ大統領に対してまっこうから批判してきた人だし、「大統領選挙までは死ねない」とも発言していた。民主党員は誰もが彼女が大統領選まで生きていてくれることを願っていたことだろう。

さて、彼女の偉業を語ることは他メディアにまかせたい。私としては、選挙への影響と、議会がどういう動きをしているかを中心に的を絞って話す。
まず、最高裁判事というのは大統領が指名をする。それを上院議会が過半数とれれば承認することになる。

マコネル上院議員は、ギンズバーグ最高裁判事の死を嘆く声明を出す一方で、大統領からの最高裁判事指名を受け取ったら採決にかけると宣言した。

これは米国民にとって一大事なのだ。現状の最高裁判事は、トランプ大統領が2名も指名してしまったものだから共和党が過半数で5名を占める。そして、リベラル派で民主党寄りの最高裁判事が4名だったのだ。これでギンズバーグ最高裁判事が亡くなったことで、この空席を埋めるチャンスができてしまった。

https://supremecourthistory.org/history-of-the-court/

銃規制の問題、移民の問題、中絶の問題など、米国内で見解が分かれた時にこそ最高裁が判決を下すのだ。判例主義なので、それがもとになる。
例えば、中絶についてはロー対ウェイド事件という判例がもとになっているので、一部の州を除き中絶は容認されている。その後、州によってある程度自由が効く判決が下されたので南部州の一部では中絶が極めて難しくなっている。

中絶問題(プロ・ライフ/プロ・チョイス)は米国を二分する問題だ。

今回、ギンズバーグ最高裁判事がなくなったことで、プロ・ライフ派(中絶反対派)の最高裁判事が就任したとしよう。そうなると、ロー対ウェイド事件が覆り、全米で母体に危険を及ばない限り中絶禁止という判決が下される可能性がでてきたのだ。

このタイミングで、もし、トランプ大統領と上院議会が保守派(プロ・ライフ)を指名できて承認されたとしよう。それは、トランプ大統領の功績になるのだ。この目標を実現することを掲げて、大統領選でも訴えかけていた。クリスチャン保守派にとっては、長年の目標が実現したことになるので、それだけでもトランプ大統領および共和党は偉業を達成したことになる。
しかも、最高裁判事は終身なので、若手が送り込めれば、しばらくはクリスチャン保守派の最高裁判事が多数を占めることになるので、クリスチャン保守の悲願が次々に実現することになるだろう。

この最高裁判事に保守派を送り込めればトランプ大統領にとって大統領選は大きく有利に動くはずだ。間違いないと思う。

一方で、上院議員が承認するかという懸念は残る。この問題については、多くの共和党議員は一致団結できるのだが、比較的リベラルな共和党員がいるのも事実だ。具体的には、マコウリスキー議員、スーザン・コリンズ議員、ミット・ロムニー議員だ。マコウリスキ―議員は既に大統領選挙・連邦議員選挙前に採決にかけるのはよろしくないと宣言したようだ。となると52票。ロムニー議員は自分の信念で判断するだろう。
個人的に、スーザン・コリンズ議員は2020年再選で最も負けそうな共和党議員といわれているので選挙資金を融通してあげるよ~、カトリックなんだから中絶反対でしょ~とかいろいろメリットを与えて巻き込むんじゃないかな。それくらい重要なことです。

それにしても、大統領選前にギンズバーグ最高裁判事がなくなったのは、民主党にとっては相当な痛手です。かつ、共和党寄りの最高裁判事を送り込まれたらもうアウトかもしれません。

あと、ただでさえ年度予算切替のタイミングでCR(継続予算決議)の予算決議をしなくてはいけないのに、最高裁判事の承認まででてきたら、もう新型コロナ追加予算の話は消滅したと思っていいかと思います。