昨日、ペロシ下院議長は、The Cares Actに続く新型コロナウイルス追加対策予算に合意するまでは休会に入らないと宣言。実質的には8月と同じく地区に戻って選挙活動しつつ必要に応じてワシントンに戻るというだけ。
ただ、この硬直状態に陥っていることは、必ずしも民主党の総意ではない。AOC議員などの急進左派はもちろんだが、穏健派からも叩かれているようだ。New Democrat Coalitionというコーカスから、追加対策予算への交渉に戻るように懇願されたこともPoliticoで暴かれているね。別の穏健派コーカスのブルードックはだいぶ前から妥結するように呼び掛けていたはず。
一方で、しびれをきらして独自の案を出してきたコーカスもいる。超党派で結成されている下院議員を中心としたthe Problem Solvers Caucus は、1.5兆ドルの追加対策予算を昨日提出した。しかし、下院少数党院内総務の共和党マッカーシー議員は、この案をサポートしなかった。ペロシ下院議長は明確には言及しなかったが、Politicoによるとサポートしていないね。
ペロシ議長への献金団体
ペロシ議長の支持基盤こそが労働組合で、多額の財政出動を要求しているようね。下院議員は2年後ごとの選挙なので、自身も再選がかかっているから簡単には妥協できない。更に、大統領選への献金もあるので、打倒トランプということなら尚更妥協できないでしょう。
And Pelosi has strong backing from progressive groups and labor unions, who are demanding that Congress pass a robust stimulus package in order to help the battered economy. While millions of jobs have returned, payrolls are down more than 11 million jobs from pre-pandemic employment levels.
https://www.politico.com/news/2020/09/15/nancy-pelosi-house-coronavirus-deal-415112
ペロシ議長の献金団体についての記事によると(2014年なのでやや古い)、ほとんど労働組合!わかりやすい!
・労働組合(AFSCME 、ALPA、International Association of Machinists 、 Laborers’ International 、The United Auto Workersなど)
・全米不動産業者協会(National Association of Realtors)
・全米最大の教師組合である全米教育協会(National Education Association)
・JPMorgan Chase
・John W. Keker(著名な裁判弁護士)
って考えるとですね、おそらく民主党内部でも強力な支持基盤をもつペロシ議長のような人と、組合などの大きな支持基盤がない民主党議員が対立しているんだろうなあと思われます。
民主党内部が分裂しているのは、AOC議員やサンダース議員のような左派だけかと思っていたけど、強力な献金団体をもつ議員たち、特にそういった支持基盤がない議員と対立している構造があるのかもね。そのうち調べます。
追加対策予算は合意があるのか?
追加経済対策で合意なければ 米経済回復6カ月遅れるとモルガンのエコノミストが発言したようだけど、たった6ヵ月かあという印象です。
追加経済対策の合意、選挙前、選挙後でも本当に実現するんですかね?
ちなみに、11月の選挙を終えたとしても、すぐに新しい会期にならない。
合衆国議会は、下院議員の任期に合わせて、奇数年の1月3日正午から次の奇数年の1月3日正午までの2年間を、1つの議会期(Congress)としているからだ。大統領就任1月20日より、やや早いスタート。
年内の上院のスケジュールをみると、10月第二週以降は選挙まで休会、選挙後も11月は2週間、12月は3週間しかセッションがないんですよね。選挙後でも時間がじゅうぶんにあるとは言い難い部分があります。来年1月以降のスケジュールは公表されていませんが、2020年を参照する限り、1月は日曜・数日以外は休会なしなのでフルでセッションなり投票ができる状況でしょう。
選挙後だったとしても、11月の連邦選挙後でねじれ議会が解消されるのか?ということが問題になってきます。大統領がどっちになろうが、ねじれ議会が続けばコロナ追加対策予算は通過しない可能性が大きい。
下院議員はトス・アップ(茶色)が全員共和党になったとしても、やはり民主党が多数党を占める予測はずっと変わらない。
一方で、上院議員は接戦となっています。今のところ、共和党がなんとか多数党を維持する予測ですが、民主党が逆転する可能性もまだじゅうぶんにあります。
これまた問題なんですが、どちらの党も60議席とれないことが確実になってきました。60議席確保できないとフィリバスターが可能になるので、どちらが多数党になったとしてもフィリバスターで多くの法案がブロックされることになると思われます。とはいえ、大統領罷免などは過半数とれれば賛成多数で通過するので、トランプ大統領就任したとしても、共和党と民主党が多数党を占めれば、ことあるごとに大統領罷免決議を出してきて混乱は必至でしょう。
おそらく、ねじれ議会が続きそうなので、結局のところ追加対策予算は成立しないか、年度予算に幾つかねじ込むかになりそうな予感がしています。
ただし、ペロシ議長は組合からの圧力および、献金問題が多少は緩和されるので、共和党案5000億ドル規模の財政出動に妥協をしめすかもしれませんね。
尚、共和党で議席がなくなりそうな議員は、スーザン・コリンズ議員はほぼ確定だけど、それ以外はこのあたりです。
参考資料:
https://www.rollcall.com/2020/09/15/bipartisan-house-group-to-release-1-5-trillion-coronavirus-relief-plan/
https://www.politico.com/news/2020/09/15/coronavirus-aid-package-problem-solvers-415015
https://www.politico.com/news/2020/09/15/nancy-pelosi-house-coronavirus-deal-415112
https://publicintegrity.org/politics/backing-pelosi-a-labor-of-love/
https://thehill.com/homenews/house/516464-pelosi-house-will-stay-in-session-until-agreement-is-reached-on-coronavirus