16日(火)12時頃(日本時間)に、トランプ大統領が1兆ドルのインフラ投資計画の報道がながれて株価が急上昇した。NRIによると、うまくいけばGDPを4.7%押し上げる効果が見込めるようだから、そりゃ上昇するだろう。
6月4日には、トランプ米大統領はインフラ事業の迅速化を求める大統領令にも署名していたらしい。ただ、大統領令にはインフラといっても、 この時点では、高速道路以外に具体的な分野の言及はなかったようだ。
大統領令は具体的に、運輸省、陸軍工兵隊、国防総省、内務省、農務省に対して、緊急事態下で認められる権限などを利用して、国家環境政策法(NEPA)などの規制を緩和する方法を検討し、高速道路などの公共事業や国有地でのインフラ・エネルギー事業を加速するよう要請している。さらに、国家非常事態宣言の期間中、30日ごとに、実際に迅速化した事業に関する報告書を提出するよう求めている。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/06/3e864d496ae32141.html
思い返せば、トランプ大統領は公約でインフラ投資1兆ドルを掲げていた。
2018年の一般教書演説ではインフラ投資規模を1.5兆ドルに増やし、2019年はさらに2兆ドルに積み増してインフラ法案を求めてきた。2020年4月にも、トランプ大統領は議会に2兆ドルの予算を求めていた。
2019年時点で2兆ドル規模のトランプ大統領と民主党指導部が先に交渉をはじめていたのが驚きだが、共和党はここには入っていなかった。
トランプ米大統領と野党・民主党指導部は2019年4月30日、2兆ドル(約220兆円)のインフラ投資法案を検討すると決めた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44396600R00C19A5EA4000/
もっとも、与党・共和党は30日の協議に加わらなかった。
そして、2020年になり、下院民主党を中心とした1.5兆ドル規模のインフラ整備計画法案が提出された。
米下院民主党は18日、1兆5000億ドル規模のインフラ整備計画法案を発表した。新型コロナウイルスの影響で悪化した景気と雇用を下支えするため、数週間以内の議会通過を目指す。
https://jp.reuters.com/article/usa-infrastructure-congress-idJPKBN23P3ST
国内の道路や港湾、クリーンエネルギー分野、教育機関などのインフラを整備する計画。ペロシ下院議長は、議会が休会に入る7月4日までに通過させたい考えを示した。
問題は、インフラ投資の内容なんだが、下院民主党案はかなり幅広い。
・高速道路関連 5,000億ドル
・低所得エリアの学校 1,000億ドル
・公営住宅 1,000億ドル
・ ブロードバンド 1000億ドル
・水道プロジェクト 650億ドル
・ 電力供給網 700億ドル、300億ドルが病院、250億ドル(10年分)が郵便局。
一方で、去年7月に上院環境・公共事業委員会で話し合ったことがあるのは2870億ドル規模の陸上輸送に関するものだ。
トランプ政権としては、道路や橋だけでなく、田舎地方へのブロードバンドについても推し進めたい意向を示しているが、ブロードバンドの予算割り当てはたった1000億ドルだ。
The Senate last July advanced a $287 billion surface transportation bill out of the Environment and Public Works Committee but has not debated it on the floor.
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-06-18/house-democrats-pitch-1-5-trillion-in-infrastructure-spending?sref=lw8NgS9l
The House Democrats’ plan goes far beyond roads and bridges. It encompasses roughly $500 billion in highway and transit funds, $100 billion for schools, $100 billion for affordable housing, $100 billion for broadband, $65 billion for water projects, $70 billion for the electric grid, $30 billion for hospitals and $25 billion for the Postal Service over 10 years.
共和党はすでにこの法案に懸念を示しており、内容面もそうだが、この費用をどうやって調達するかについて反発している。下院民主党案では、増税ではなく、債券発行で賄うとのことだ。民主党は、2009年にオバマ時代に発行されたビルド・アメリカ債(Build America Bonds/ 通常非課税の地方債の代わりに、連邦の補助金付きの課税対象地方債を発行するプログラム )を念頭に置いているらしい。詳細はWSJの記事に詳しく書いてある。
どう考えても、共和党が選挙前とはいえ、このインフラ投資内容を採用するとは思い難い。特に、学校や公営住宅といった大きな政府に該当するようなインフラ投資について連邦政府がすべきとは思っていないだろう。
だとすると、高速道路・橋などの従来のインフラとブロードバンド投資などを含めて3000億~5000億ドル規模に落ち着くのではないかと思われる。2019年の段階で2800億ドルくらいの予算を検討していたくらいだから、インフラ投資をしないわけはないと思うが、問題は投資内容と投資額がどうなるかになるだろう。
参考記事
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/06/3e864d496ae32141.html
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44396600R00C19A5EA4000/
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-16/QBZZ8AT1UM1101
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-06-18/house-democrats-pitch-1-5-trillion-in-infrastructure-spending?sref=lw8NgS9l
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-06-16/trump-team-weighs-1-trillion-for-infrastructure-to-spur-economy?sref=lw8NgS9l