日本市場における自社株買いと個人の買いについて

日経平均株価のEPS(1株当たりの純利益)は、5/18~5/19に550円前後にまで落ち込んだ。4/13までは、1,500円だったので一時期は3分の1までに落ち込み、直近でのEPSは1072円(5/26)だ。
ところが、日経平均株価は4/13に 19,043.40円にまでなってから、上昇の一途を辿り、5/26は21,271.17円にまで上昇した。
教科書通りに考えるならば、株価は将来にわたる期待収益の割引現在価値の総和 になる。ならば、4/13のEPSを基準で考えると約30%株価が下落してもいいはずだ。しかしながら、11.7%も上昇しているのだ。

もはや、株価は、期待収益の割引現在価値の総和を示していないといえる。
日経CNBCで放映されていたようだが、全EPSと日経平均で全然連動がとれていないことがわかる。

今年に入ってから、海外は8.8兆円を買い越ししているが、個人と日銀で6兆円を買い支えている。売買代金の7~8割を占める海外が売り越しを続けているので、どこが買っているのかということだ。日本銀行は本日時点で4兆円買入、J-REITは 655億円買い入れている。2019年6月末で日本銀行は2.2兆円の買入だったので、確かに2倍を超える買入ペースにはなっている。
しかし、本当にそれだけなのだろうか疑問が残るのである。

日本企業の自社株買いはない。

懸念していた、事業法人による自社株買いについては激減しているとのことだ。
2019年の日本株の自社株買いは6.3兆円で過去最高に達した。
例年なら5月、11月に自社株買いは増加するはずだが、半月経過したところで数百億円というのはずいぶん少ない金額になる。
ソフトバンクGが2.5兆円の自社株買いを発表したが、4月末時点での進捗(しんちょく)率は3.2%で160億円しか実施していない。となると、5/12までの自社株買いの半分はソフトバンクGが占めていると考えてよいかもしれない。

5月12日までの自社株買い発表の累計額はわずか数百億円。過去6年間の5月の月間平均(約1兆4000億円)と見比べると、その差は歴然といえる

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59041680T10C20A5EN1000/

個人の大幅買い越しがきているのか。

ロイターには、 日本のITバブル時に、98年に施行された、中小企業金融安定化特別保証制度が流入したと書かれている。
政府が個人1人に10万円ばらまき、持続化給付金、 無担保・実質無利子の新型コロナウイルス感染症特別貸付がでているが、それがどれだけ金融市場に流れるかというとまだわからない。
というのも、 新型コロナウイルス感染症特別貸付は限度額3億円と6000万円があるが、どれだけ借りているかのデータがまだひろえない。実際の融資額がどのくらいの規模になっているかになるのだろう。

一方で、ネット証券は、開設口座急増で勢いにのっている。増加しているのは、つみたてNISA口座やNISA口座のようだ。これらは、年間の限度額があり、それぞれ年間40万円、年間120万円。
最新発表では2019年12月末時点のNISA口座数は、 1,365 万 5,575 口座だ。
仮に1000万人ふえてNISA年間枠を全部つかったら年間12兆円の買いになる。日銀の年間ETF買い入れ額と同等になるってことだ。ただ、経済再開に伴い、「時間があったから開設した人」は収束する可能性も大きい。
尚、現時点のNISA口座経由の買い入れ額を口座数で割ると、2019年末時点で130万円くらいにしかならない。年間限度額さえ使い果たしていない人が多そうなことが予測される。

そして、盲点だったが、東証によると、投資部門別売買状況では、株式、ETF、REITはそれぞれ別に集計されているとのことだ。

いつも見ている指標は、投資部門別で東証一部・二部の株式+指数先物をみていたので、ETFとREITがまるまる抜けていたことになる。ただ、ETFを通じて日本株に投資される場合は、信託を通じて最終的には株式が買われることになるから、それだけで今までのデータでじゅうぶんだろう。ただし、ワールドインデックスなどになると日本の株式にあまり流れないので、やはり漏れることになると思われる。
なので、東証が発表している投資部門別売買状況をみてみることにする。
こうやってみると、1月、3月については個人ではETF買いの方がETFより大きいが、4月はETFが株式を上回る。2月も同じくらいの買いだ。そして、コロナウイルス以前の年初から一貫して買いを続けている。

●投資部門別 ETF売買状況 [金額] 全 49 社 単位:千円
【個人】
4月 80,643,021
3月162,817,637
2月111,673,268
1月 36,860,589

●投資部門別  株式売買状況 二市場一・二部等 [金額] 全 49 社
【個人】
4月 55,985,804
3月845,444,696
2月152,966,298
1月 666,502,907

●投資部門別 不動産投資信託(REIT)証券売買状況 [金額] 全 49 社
【個人】
4月 15,818,474
3月 47,760,923
2月▼28,312,966
1月▼15,246,952

ちなみに、海外投資家はどうかというとETFについては1~4月累計で約1兆円の売り越し。だとすると、株式は8.9兆円の売り越しとなるのでこちらはあまり気にしなくてよさそう。

●投資部門別   ETF売買状況 [金額] 全 49 社 単位:千円
【海外投資家】
4月 ▼236,396,151
3月 ▼460,107,421
2月 ▼174,674,318
1月 ▼70,625,034

一方で、REITについては3月に大きく買い越しして、4月に先月買い越し分を売り越ししてきてる。不動産価格に関わっていくのでここも注視していくほうがよさそうだ。

●投資部門別  不動産投資信託(REIT)証券売買状況 [金額] 全 49 社
【海外投資家】
4月 ▼17,377,102
3月 34,324,508
2月▼5,429,965
1月14,909,719