米市場で中国企業上場を止める動きと、中国企業の香港回帰

以前から、共和党のマルコ・ルビオ議員やジョン・ケネディ議員が中国政府と関係がある中国企業が、米国の会計監査基準を満たさずに上場していることについては懸念を表明していたが、20日、全会一致で法案が可決した。
また、ペロシ下院議長は、採決日まで言及しなかったが、審議を予定していると発表。ソースはこちら

外国政府の管理下にないことを企業に証明を求める内容。
企業がそれを証明できないか、米公開会社会計監督委員会(PCAOB)が3年連続で会社を監査して外国政府の管理下にないと断定できない場合、当該企業の証券の上場は禁止される。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-05-20/QANBNZT0G1KX01

今すぐに上場廃止とはならないはずだが、証明するのはかなり難しいのではなかろうか。というのも、2019年の時点でSECとPCAOBは、米上場中国企業の調査をすることが難しいとして注意を喚起しているからだ。
ロイターによると、中国企業は、企業の帳簿や記録を国外に持ち出せないので、SECやPCAOBが調査することが難しいからである。

米証券取引委員会(SEC)と上場企業会計監視委員会(PCAOB)は昨年、米上場中国企業の監査資料や中国会計事務所の監査慣行を米当局が調査することの難しさについて投資家に注意を喚起した。
両委員会によると、中国は企業の帳簿や記録を中国国内に保管することを法律で義務付けており、中国で実施された監査の書類を国外に持ち出すことを制限している。

https://jp.reuters.com/article/usa-congress-china-exchanges-idJPKCN1T707Y

ナスダックがIPOルール規制

5月に入ってナスダックはIPOの規模について制限を新たに設けた。
しかし、この動きは突然あったわけではない。米中摩擦の一貫かというと、そういう側面もあるだろうし、そうではない問題もある。

ブルームバーグ・ニュースが閲覧した届け出資料によれば、新たなルールの下では、中国を含む一部諸国の企業のIPO規模について、最低2500万ドル(約26億8500万円)か、上場後の時価総額の少なくとも4分の1という基準が適用される。
中国企業による多くのIPOの規模は基準を下回っており、株式はインサイダーの少数グループが保有し、流通量が少ない

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-05-19/QAJZ7NDWRGO001?srnd=cojp-v2

というのも、 低流動性と高いボラティリティを巡るナスダックについて懸念極端に低いことをナスダックは問題視していたようだ。ロイターのこの記事を読む限りは、インサイダーの手元におさまっているだけになっているようだし、米国の一般投資家・機関投資家が売買しているとは到底思えない。

背景には、中国の中小企業がIPOに際して、米国の投資家ではなく、中国の投資家から大半の資金を調達する傾向が強まっていることがある。こうして上場された中国企業のほとんどの株式は、ごく限られた「インサイダー」の手元にとどまっているため、取引量が非常に小さく、ナスダックが取り込みたがっている多くの機関投資家にとって魅力の乏しい銘柄となっている。

https://jp.reuters.com/article/nasdaq-china-idJPKBN1WF00P

中国企業も米国市場から逃れる動きが加速

中国側も、単に米国から規制が入る状況について危機感を抱いているようで、ロイターによると、現在はとまっている上海証券取引所とロンドン証券取引所の株式相互接続(ストック・コネクト) 制度を活かして、ロンドン市場の上場を進める意向だ。ただ、現在、 ロンドンに上場したのは華泰証券(HTSCq.L)のみ。 中国当局が昨年保留扱いとしていた中国太平洋保険(601601.SS)とSDICパワー(600886.SS)のロンドン上場はやっと当局から許可されたほか、中国長江電力(600900.SS)もロンドン証券取引所への上場準備を進めることを認められたようだ。どこまで加速するかはわからない。

一方で、中国企業の香港回帰も加速している動きがある。 中国の大手検索サイト百度(バイドゥ)(BIDU.O)がナスダック市場への上場廃止を検討しているとロイターが報じて、一時大幅下落した

中国ゲーム大手の網易(ネットイース)が香港取引所に株式上場を申請したことが21日、分かった。米ナスダック市場との重複上場を目指す。米国で上場する中国企業ではアリババ集団が2019年に香港への重複上場を果たしたほか、京東集団(JDドットコム)も香港に上場申請している。米中対立の影響で米に上場する中国企業の「香港回帰」が加速している。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59386880R20C20A5FFJ000/

この流れをうけてか、ハンセン指数が構成銘柄採用規定を変更してきた。今年8月に構成銘柄入替があるので要注意だろう。アリババが10%など構成率を占めれば、爆上げしそうだが、アリババはセカンダリー上場になるので上限はウェイト上限は5%になる。となると、ハンセン指数の構成率トップはテンセントで10%でここは変わらなそうだ。

香港証券取引所の主要株価指数であるハンセン指数は、種類株やセカンダリー上場も構成銘柄に採用すると規定を改正した。 電子商取引会社アリババ・グループ・ホールディングといった大手中国企業の指数採用に道を開く決定 。
金融株が多くを占めるハンセン指数の構成に変化をもたらす一歩となるが、種類株とセカンダリー上場はそれぞれ比重の5%と上限が設定された。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-05-18/QAIS17DWX2PS01

このように、中国企業が香港市場回帰を進める中で、香港での国家安全法を提出してきた。新型コロナウイルス感染が収束するとともに、これに乗じた民主化運動人物の取り締まりが強化していたわけだが、またデモを加速させている。
香港市場に回帰するといっても、治安の問題がまだ解決していないわけだし、まだまだみえない道が続く。