中国と世界のディカップリングは進むのか。

米中ディカップリングについては、数多く記事を書いてきているが、中国側の動きもみておきたいと思う。
中国は、表向きは米国政府や米国議会からの圧力に対して、制止するような姿勢を示しているが、実際は様々な動きを進めている。

中国による対米投資は減少の一途

WSJによると、 米国による対中投資は過去10年、年平均140億ドル相当で、ほぼ一定していて、海外からの対中投資全体の10~12%を占める。 一方で、トランプ大統領就任後に中国への強硬路線に転じてから中国から米国への投資は急減して2019年は、2010年の規模にまで下落した。

https://jp.wsj.com/articles/SB11239957381763274362404586394283042007622

ただ、中国は米国を減少させた分で他の国を増やしているかというと、そうではない。2017年を境にアジアを除き、急減していいっていることは留意する必要がある。 尚、中南米向けも、あまり減少していないようにみえるが、それらは租税回避地であるケイマン諸島・英領ヴァージン諸島への投資がほとんどだ。

https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/gl200304.pdf

2016年から2019年にかけての変化額でヨーロッパは30億ドルに達するが、そのうちの半分は英国とドイツへの投資減である。

https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/gl200304.pdf

尚、唯一、唯一直接投資を増加させているのはアジアのみで、主に一帯一路のエリアになる。

https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/gl200304.pdf

中国企業はロンドン市場上場を進めたい

今年1月に英国と中国での政治的緊張が高まり、一時的に停止していた上海・ロンドン株式相互接続だが、中国政府はロンドン市場への上場を促進させたい考えだ。しかし、英国がどうでるかはまだ不明だ。
不正会計が明らかになったラッキンコーヒーは売買停止になっているが、ナスダックから上場廃止通告を受けた。このような状況をみて、ロンドン市場は彼らを受け入れるかどうかは定かではない。
結局、米議会からのファーウェイ懸念の通告に限らず、未だにファーウェイを締め出す動きにはなっていないようだ。一方で、英国議会も中国企業のロビー活動の調査などの動きもある。中国企業・中国政府と癒着して儲けたい人達と、安全保障の観点から中国を排除すべきという動きでしばらくは揺れ動くのではなかろうか。

上海・ロンドン株式相互接続は、中国企業の投資家基盤拡大や、中国本土の投資家による英上場企業への投資につながるとみられているが、これまでのところ、ロンドンに上場したのは華泰証券(HTSCq.L)のみ。
関係筋によると、中国当局が昨年保留扱いとしていた中国太平洋保険(601601.SS)とSDICパワー(600886.SS)のロンドン上場が許可されたほか、中国長江電力(600900.SS)もロンドン証券取引所への上場準備を進めることを認められた。

https://jp.reuters.com/article/britain-listings-china-idJPKBN22V02K

自ら世界とのディカップリングを進めて小さくなっていく可能性も

中国(中国共産党)という国家が興味深いのは、決して、世界覇権を目指しているわけではないということだ。これはフォーリン・アフェアーズでも何度か書かれているが、権力拡大に動きたいだけであって、世界覇権を狙うこととは違う。ただし、その過程で覇権国家である米国と衝突するというわけだ。

米国からの圧力に対して、世界を味方につけるという発想がないようで、米中摩擦と並行して、オーストラリアとの関税戦争も同時並行で行っている。中国国内で起きたアフリカ人差別がキッカケで、アフリカ各国との関係もぎくしゃくしていることもある。イスラエルと中国は、米国の介入で急速に冷え込む可能性が出てきている。

契約を守れない国家同士の同盟は、同盟ではない。

経済がうまくいっている時は、非プロテスタント国家同士の同盟でもうまく事が運ぶのかもしれないが、ひとたびこうした災難が起こると契約が試されるということだ。まさに聖書における神との契約なのだなぁと思い知らされる。

もしかしたら、中国は、自ら世界とディカップリングをしていくのかもしれない。技術的には最先端だった鄭和の大航海時代から、明の鎖国体制に突入していったように。