新型コロナウイルスが世界で感染拡大してから、新興国通貨の痛みが激しい。
まず、新興国に限らないが、原油価格下落にともない、原油へのエクスポージャーが高いいロシアのルーブル、ノルウェーのクローネ、メキシコのペソなどは通貨安に見舞われた。それは原油価格下落に伴う下落だ。
次に、世界中での新型コロナウイルス感染拡大に伴い、 リスク回避の動きで新興国通貨売りがでた。アルゼンチン、トルコ、ブラジル、南アフリカが顕著だが、インドネシアが急落していて、インドのルピーも下落している。
トルコは年初来で18%も通貨が下落した。しかも、7日にUBSなどの外銀3行に対してリラの外国為替取引を禁止するといった資本規制にまで踏み切った。
新興国の外貨準備高
通貨が下落すると、通貨安を食い止めるために外貨準備を取り崩すことになるのだが、外貨準備がじゅうぶんに蓄えられていない場合は、通貨安が食い止められないことになる。外貨準備が減れば、債務支払い能力が低くなり、デフォルトが高まってくる。 中国はなんだかんだで3兆ドルをキープしていてずば抜けている。ブラジル中銀の外貨準備高は3,625億米ドル( 2020年2月末時点)で、経済規模は1.8兆ドル。
2019年末の外貨準備高 参照元はこれ / 経済規模は2018年時点でこれ
ロシア 4439億ドル / 経済規模1.6兆ドル
インド 4323億ドル / 経済規模2.7兆ドル
メキシコ 1771億ドル / 経済規模2.7兆ドル
インドネシア 1253億ドル / 経済規模1.0兆ドル
トルコ 785億ドル / 経済規模0.7兆ドル
南アフリカ 489億ドル / 経済規模0.3兆ドル
アルゼンチン 421億ドル / 経済規模0.5兆ドル
トルコは、2019年末に785億ドルの外貨準備があったことを考えると、減少ペースが非常に早い。外貨準備高だけを考えれば、南アフリカなみの外貨準備しかなくなっていることがわかる。しかも、経済規模は、南アフリカの2倍もある。それだけでなく、ヨーロッパへの移民流入を食い止めている重要な国なのでもある。
トルコは3月、通貨安に歯止めをかけるため、外貨準備から190億ドル以上を引き出し、ドル売り・リラ買い介入を実施。外貨準備の総額は約560億ドルまで減少したが、実態はこれをさらに下回っている可能性がある。
https://jp.wsj.com/articles/SB10906382876223754534704586367941194723876
FRBのドル供給のための通貨スワップ協定は結べなそう
しかも、これらの国はFRBが実施している、ドル供給のための通貨スワップ協定に入っていない。 6日に米リッチモンド連銀のバーキン総裁がトルコなどとのスワップ協定の可能性について尋ねられた際、「相互に信頼関係のある国」とは既に協定があると発言したことで、通貨スワップ協定が結べるかは定かではない。
米連邦準備制度理事会(FRB)は3月、ドル供給に向けた通貨スワップ協定の対象をメキシコやブラジル、ノルウェーなどの国にも拡大したが、トルコはこれに含まれていなかった。
https://jp.wsj.com/articles/SB10906382876223754534704586367941194723876
トルコはIMFも拒否
トルコは、かねてからIMFからの資金借り入れを拒否しているし、今回も救済を求めそうにない。
通貨が危機的な状況に直面した国は、国際通貨基金(IMF)に支援をあおぐことが多いが、エルドアン氏はIMFからの支援受け入れを繰り返し拒否している。政権関係者は、IMFに救済を求めれば、弱さを露呈していると受け止められ、エルドアン氏の政治的な立場を損なうことになりかねないためだと説明する。
https://jp.wsj.com/articles/SB10906382876223754534704586367941194723876
では、どこの国が救えるのか?というと、EUが思い浮かぶ。なぜならば、ロシアとトルコは停戦中で、一時期の蜜月関係からはだいぶ冷え切っている。 米国は、救済しそうにないだろう。となると、トルコに移民というカードを握られているEUしか救済しそうにはないだろう。しかし、そのEUだって、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、財政的に厳しい状況だ。問題児であるギリシャだけでなく、イタリア、スペイン、ポルトガルの経済が急速に悪化していてドイツでは支えられない状況だ。だとすると、トルコは移民というカードをきったとしても、何も得られず、EUは壊滅するかもしれない。