共和党・民主党上院の117会期党内人事発表(第一弾)

さて、共和党も民主党も117会期の上院議会における党内人事を発表したのでまとめたいと思う。上院は、マーケットにおいても、重要な人事(FRB理事承認、最高裁判事承認、 大統領が取り決めた国際条約の承認権)の承認権限をもっています。また、下院議員は任期2年で435名もいるのに対して、上院議員は任期6年で100名なので情報追いやすいという利点もあります。上院議員は多数党かつ重要な常任委員会の委員長さえ追えば済むので数十名フォローすればたいていの事は追えます。メディアは目立つテッド・クルーズ議員とかトム・コットン議員とかフォーカスしてますが、追うべき人は党内人事の要職と、委員会委員長ですよ。

さて、では党内選挙が行われて一部結果が発表になった。

共和党上院人事は116会期と変わらず

◆院内総務 : ミッチ・マコネル(KY)
◆院内幹事: ジョン・スーン(SD)
◆上院共和党議員総会議長:ジョン・バラッソ(WY)
◆上院共和党議員総会副議長:ジョニ・アーンスト(IA)
◆上院共和党議員政策委員会議長: ロイ・ブラント (MS)
◆ 共和党上院委員会 :リック・スコット(FL)←NEW!まだ写真は変更なし

http://www.senate.gov/senators/leadership.htm

まずは、なんといっても、上院のリーダーでもある多数党院内総務は、ミッチ・マコネル上院院内総務が続投。上院選も再選圧勝しましたね。カネと利権にまみれて米国民から絶大な不人気のマコネル上院院内総務だが、共和党歴代最長の上院院内総務の座を維持している。Politicoでも“Darth Vader” and the “grim reaper.”とニックネームがつけられていると書いてあって笑えるw
2007年から6年間は少数党として苦しい状況だったが、2014年から上院で多数党を維持し続けてるのは彼の功績で評価に値する。また、上院選に2億ドルも投下できる資金調達力はすごい。上院議員、というより連邦議員の中で一番資金調達力があるんじゃないですか。
政治家は、どこかの企業・団体の代表なんだから、利権とカネにまみれるのは致し方ないのですよ。どこかの代表になってない人が政治家になれるなんてAOC議員みたいなのがいるにはいるが、基本的には幻想ですよ、そんなの。
米国民から全般的に不人気であっても、州の代表として責務を果たしていれば再選しますよ。州の代表としていかに連邦政府予算からカネ引っ張ってくるかが上院議員の役割なのだ。なのでツイートみてると、しょっっちゅう「●●州のために私はこの法案を実現させた」「●●州のためにこういった活動をした」とアピールしている。連邦政府のおカネをつかって州の利益に貢献すれば上院議員として実績になるわけです。

余談だが、妻はトランプ政権の運輸長官であるイエレン・チャオ。イエレン・チャオの父親が中国の江沢民と同級生で色々黒い噂がある。このあたり調べたいが、情報がなかなか出てこないのと、何よりも私の筆が進まない…(涙)

また、選挙中のマコネル・キャンペーンの動画は非常に印象深かった。「共和党は田舎でしか票を集められていない田舎者」と揶揄されることもあるが、この動画は都市ではない南部・中西部の米国民に響く内容だと強く感じた。「米国といえば、CAとかNY」をイメージしている人ほど、ぜひご覧いただきたい動画だ。

民主党上院人事は116会期と少し変化

◆院内総務 : チャック・シューマー (NY)
◆院内幹事: ディック・ダービン (IL)
◆ 民主党指導者補佐 : パティ・マレー (WA)
◆ 政策・通信委員会委員長: デビー・スタバノウ (MI)
◆上院民主党議員総会副議長:
エリザベス・ウォーレン (PA)/ マーク・ワーナー (VA) 
民主党はタイトルが多すぎなので主要のみ抜粋。

人事で追加があった人は、コリー・ブッカー(NJ)とキャサリン・コルテスマスト(NV)を、政策およびコミュニケーション委員会副委員長およびアウトリーチ活動副委員長として追加。 アウトリーチ活動委員長は、バーニー・サンダースは2016年就任から今回も引き続きですね
また、 民主党は選挙運動部門議長を今回の内部選挙することを延期したようだ。今回の上院選において期待外れの結果になったわけだから、このあたりは強化したいところだろう。

民主党上院議員も、チャールズ・シューマー議員は院内総務に就任してから3回も多数党になるチャンスがあったのに負けて続けているわけです。それでも、党内選挙で再選してしまうあたり、適任者が彼以外いないってなんかアレだなぁと思います。

バイデン政権は、早くも政権人事の壁に

バイデン政権メンバーが誰になるかを色々なメディアで取り上げていますが、早くも行き詰まりが報じられています。理由は、上下院の議席数と大いに関係があります。

まず、民主党上院議席は48議席を確保しましたが、共和党50議席、2議席GA州決選投票(2021年1月5日)があるのでまだわからない状況です。
そして、バイデン政権が無事に政権を引き継いだら、現在上院議員のカマラ・ハリスの議席が補欠選挙になります。とはいえ、CA州なので共和党と接戦になることはないと考えられていますので、これは大丈夫でしょう。
しかし、接戦州になりそうな州から上院議員を引き抜くと何が起こるでしょう?ただでさえ少数党になりそうなのに、ますます議席を失うことになります。これは避けたいですよね。なので、私はスゥイング州のPA州選出であるウォーレン議員を政権内部に入れることはほぼ不可能になったとみています。もっとも、上院多数党が共和党になればウォーレン議員が財務長官なんて上院で承認されないでしょうが。
他には、デラウェア州など真っ青な州のクリス・クーンズ議員なんかはバイデンと長い付き合いなので内閣入りが噂されています。クリス・クーンズ民主党上院議員って外交委員会所属で中国に対してかなり強硬発言を繰り返してきてたけど、どうなんですかね。

米国は、三権分立を徹底しているので行政府に入った人が議員を兼任することはできません。なので、ホワイトハウス入り、あるいは長官就任時には議員を辞任する必要があります。

さて、問題は連邦下院議会です。本日、やっと下院議会で民主党は過半数(218議席)を維持できました。あれだけ圧勝といわれていたのに、ペロシ下院議長の無駄な協議先延ばしが失敗して穏健派からあれだけ「議席を失う」と警告うけたのに、この結果です。共和党がさらに議席を伸ばしていて、今のところ米民主党225議席:米共和党205議席の見込みとなっています。現在、民主党は233議席だったのに、12議席も落としたことになります。大失敗です。

下院議席を減らしたということは、よっぽど支持基盤が固い選挙区でない限り、下院議員から政権メンバーに引っ張ったら、補欠選挙で議席を失うことになるのかもしれないわけです。
そもそも民主党は内部分裂が激しくプログレッシブ(AOC議員などの進歩派)がいるため、下院民主党として一致団結することがますます難しくなっています。なので、20議席差では、あまり下院議員から引き抜くことはできないでしょう。

とはいえ、アフリカ系アメリカ人のカレン・バス議員(黒人議員連盟会長を)は、副大統領候補にも名前がでていて有力候補だったですし、同じくアフリカ系アメリカ人のバーバラ・リー議員なんかは内閣入りが囁かれていますね。

まぁこのあたりの予測はいろんなメディアがやってるのでそれにお任せしたいと思います。私としては、管轄法案を握りつぶせる権限をもつ委員会委員長を誰が務めるかの方かが重要ですね。
党内人事が変らなかったことを考えると、主要委員会の委員長ポストは、続投なんではないでしょうかね。