共和党から、すごい下院議員立候補者がでてきた。
Kimberly Klacik(キンバリー・クラシック)というアフリカ系アメリカ人(黒人)女性だ。なんと、メリーランド州のバルチモアから立候補している。このエリアは治安が悪く、トランプ大統領はかつて「ネズミがはびこる街」と発言して非難を浴びた。黒人下院議員だった故カミングス議員の選出区でもあった。
メリーランド州は、州議会は民主党が支配しているが、州知事は共和党というねじれ状況だ。そして、カウンティ別の党派別有権者登録をみると、共和党と民主党有権者登録数が拮抗しているカウンティも多いが、バルチモアについては民主党が圧倒的だ。
そんな中で、彼女が登場してきたわけだ。しかもこのビデオすごい。
バルチモアがいかに廃れているかよくわかる。
治安が悪い場所って、民主党が支配しているじゃん。彼らは私たちに何をしてくれたのよ、と訴えかけている。民主党は、わたしたちがずっと投票してくれると考えている。そんなんでいいの?と投げかける。
民主党にとって不都合な真実を見事にうつしだしているよ。すごい。
Democrats don’t want you to see this.
— Kimberly Klacik (@kimKBaltimore) August 17, 2020
They’re scared that I’m exposing what life is like in Democrat run cities.
That’s why I’m running for Congress
Because All Black Lives Matter
Baltimore Matters
And black people don’t have to vote Democrat
Help us win https://t.co/CSOjc9aQlS pic.twitter.com/XnEDTaDDIG
共和党大会でも、彼女のビデオメッセージが流れた。
共和党大会で登壇する女性は、共和党カラーである赤いワンピースで着ているが、さすがに重複すると思って、赤と白のバラのワンピにしたのかしら。
真っ赤なワンピース、彼女はよく似合っているけどなあ。
Biden believes the color of our skin dictates our political views, says Kim Klacik, who is running for Congress in Baltimore, Maryland.
— Bloomberg (@business) August 25, 2020
More on the #RNCConvention2020 https://t.co/YtUMuX2lZi pic.twitter.com/Uk4t9PezYN
さて、共和党には現在、上院1名、下院1名しかアフリカ系アメリカ人議員がいません。どちらも男性です。しかも、ミット・ロムニー大統領候補2012年の黒人投票率は6%、トランプ大統領は8%。共和党は長い間、黒人票をとれていません。
どうやら、初の共和党アフリカ系アメリカ人の議員は、彼女が初めてだったようです。なので、キンバリー・クラシックが当選したら、2人目の共和党アフリカ系アメリカ人女性になるでしょう。
ちなみに、1950年~現在まで、アフリカ系アメリカ人の共和党連邦議員はたった8名しかいません。公民権運動で黒人票を取り込んだ民主党に対抗したことで、共和党と黒人はディカップリングしたわけです。
1950年~1999年の50年間では、たったの4名!2000年~現在になって4名なので、少しづつ取り込んできているのでしょう。
ちなみに、共和党とアフリカ系アメリカ人は、南北戦争直後は結びつきがそれなりにありました。南北戦争で奴隷制度廃止したのが共和党(当時はホイッグ党)ですからね。1870年3月、アメリカ合衆国憲法に憲法修正第15条を加えることによって黒人にも選挙権を認めたことがキッカケとなり、1850~1899年にはこれだけの黒人連邦議員が誕生したのです。上院議員はたった1名ですが、小選挙区から下院議員21名も代表をだせたというのはすごいことだったはずです。
しかし、これに危機を感じた主に南部州が黒人分離政策をとっていくことになるんですけどね。
ちなみに、1850~1899年で民主党選出のアフリカ系アメリカ人は一人もいません。1900~1949年でもたった3名でイリノイ州とNY州からだけ。民主党でアフリカ系アメリカ人連邦議員が多くなったのは、公民権運動以降ですからね。
こうした歴史をみると、この60年ほど民主党はアフリカ系アメリカ人を取り込んできたけど、これがひっくり返る時がもう近いのかもしれないね。キンバリー・クラシックは、それを象徴するような共和党議員立候補者だと感じました。