9/30-10/5:総選挙後まで休会入りした米議会。総選挙後のレームダック期間でも進めなければいけない4法案

予定通り、米議会は休会に入りました。9月末で期限が切れる年度予算に対応するつなぎ予算は無事に9月26日に大統領署名まで終えた。結局、トランプ氏が総選挙前に強く可決を求めていたSafeguard American Voter Eligibility Act(通称: SAVE Act)は立法できなかった。
米議会が再開するのは、Veterans Day後の11月12日~となる。総選挙後から次の会期まではレームダック期間と表現され、重要法案は次の会期に持ち越されることが多い。しかしながら、今年はこれらの重要な議案が残ってしまった。

総選挙後のレームダック期間であっても、以下4つは対応しなくてはいけない。
基本的には、次の議会構成で決めようというスタンスだ。しかしながら、総選挙の結果次第で動きが変わる。なので、今の段階ではどういう動きになるか予測が

1. つなぎ予算の期限(12/20)に対応

今回可決した つなぎ予算(H.R.9747 – Continuing Appropriations and Extensions Act, 2025 ※1)は、12月20日までとなる。そのため、年内に、2025年度予算を可決するか(こっちはほぼ無理)、再度つなぎ予算を可決する必要がある

2. 国防権限法

下院は既に6月28日に国防権限法(Department of Defense Appropriations Act, 2025)を可決している。しかし、上院では委員会でしか可決していない(※2)。当初、つなぎ予算は来年もつなぎ予算にするのは国防にとって懸念が多すぎるということで年内の期限になった。上院と下院の法案内容にも食い違いがあるので、交渉でまた必要になるだろう(※3)

3. 9/30に期限が切れ、年内には資金が枯渇する農業法案

Farm bill(正式名称は、the Farm, Food, and National Security Act of 2024)が9月30日で期限を迎える。9月に入ってから、300以上の農業団体がワシントンに来訪し、ロビー活動を進めてきたが未だ進められていない。しびれをきらした数十人の共和党下院議員がジョンソン下院議長に年内にこの法案を採決するように迫った(※4)
この法案は、総額1.5兆ドルにもなり、主に栄養補助プログラム(SNAP)と農家への補助金から成り立っている。米国にも巨額の農業補助金が存在しており、その巨額の農業補助金を立法してきたのは共和党だ。ただ、それだけだと成立できない。そのため、民主党と共和党が協力して進めるために、農業補助金と栄養補助プログラム2つを抱き合わせて進めてきたのだ。とはいえ、今となっては 栄養プログラムが支出の約8割を占めているので、これを共和党は少しでも予算削減したいわけだ。農業法案は主に4つの内容で構成されている(※5)

①栄養プログラム
低所得者層が小売店で食料を購入するための資金を提供する補助栄養支援プログラム(SNAP)が含まれているからだ。
②農業保険
農家への保険料補助や農業保険企業に対しての引き受け支援も含まれる。
③保全休耕(CRP)
土壌などの保全を目的とした耕作地・休耕緩和プログラム。休耕した場合、米農務省(USDA)がその借地料を支払う。
④コモデティ・プログラム
・価格損失補償(PLC)参照価格に販売価格が達しない場合に、その差額が農家に支払われる。
・農業リスク補償(ARC)過去数年間の平均的な農家の収入水準を当該年収入が下回った場合に、その差額を農家に支払う
・酪農リスク管理プログラム(DMC)生乳価格と飼料コストのマージンに基づいて生産者を支援する
などの作物生産者支援。

すでに下院農業委員会は33対21の賛成多数で委員会採決はクリアしたが、未だに民主党から支持は得られていないし、民主党側から提案した法案もでてきていない。

4. 債務上限の一時停止は2025年1月1日で終了

2023年6月3日に立法したFiscal Responsibility Actは、2025年1月1日まで債務上限を停止するものだ。合衆国の信用において金銭を借り入れる権限は米議会にある(合衆国憲法Section8)。今回は借り入れる上限金額を設定したのではなく、2025年1月1日までは上限を設定せずに借り入れることが可能になっている。

で、2025年初頭に債務上限が復活した際に米国政府が借入限度額を使い果たすまでどの程度の期間があるのかを予測している(※6)
とはいえ、総選挙が終わったレームダック期間なので債務上限停止を短期間延長して次の議会構成で決めるという流れになるのではなかろうか。

※1:H.R.9747 – Continuing Appropriations and Extensions Act, 2025
※2:Lawmakers race to avoid farm bill disaster
※3:Gaming out the lame duck
※4:Farm Bill Spending
※5:Appropriations Watch: FY 2025
※6:Wall Street’s Early Read Places Debt-Cap Deadline in Mid-2025