米議会6/17~21/トランプ氏とマコネル上院議員の初会合が実現。下院共和党には関税引き上げ推進を約束。

6/17~6/21はJuneteenthの祝日をはさみ、下院議会は休会。上院は今週に開催したら、来週から2週間の休会。上院は判事の承認しかスケジュールがでていないので何か大きな法案は今のところない。シューマー多数党上院院内総務が急に発表する可能性はあります。

6月上旬の米議会トピックス

1. トランプ氏が議事堂襲撃事件以来、6/13に初めての議会訪問。下院共和党には関税引き上げ推進を約束。マコネル上院議員とは和解。

2021年の議事堂襲撃事件以来、トランプ氏は初めて米議会を訪問した。
まず、午前中は米議会下院との会合。
The Hillの報道によると、 下院共和党議員との会談でトランプ氏は2期目も関税引き上げを推進すると約束し、共和党議員はそれを支持する用意があると述べた。 下院歳出委員会の委員長であるコール議員によると、この関税についてトランプ氏はとても長く話していたようだ(※1)
ジョンソン下院議長は2024年総選挙の連邦議会選挙は共和党が勝利すると自信を深めており、会期が変わった1月にすぐに対応できるように準備すると息を巻いている。

関税の話は備えておいたほうがいい。今回、上院共和党にそこまで話をしたかは不明だが、少なくとも下院共和党には相当あつく関税引き上げを推進すると語ったようだ。しかも、トランプ氏が再選したら、USTRにライトハイザーが就任する可能性は高いとされている。
・全輸入品に10%の関税を課し、中国産品にはさらに高い関税を課すというトランプ氏の提案を、ライトハイザー氏は強く支持している(※2)

午後は上院共和党とトランプ氏の会合だ。
トランプ氏とマコネル上院議員の会合も議事堂襲撃事件以来、初めて実現した。トランプ氏もマコネル上院議員を非難してきたし、マコネル上院議員も同様に非難してきた。トランプ氏に至っては、マコネル上院議員を“lousy leader””RINO” とか、もっと侮辱する発言もしてきた。そんな状況が数年続いてきた中で、マコネル上院議員がトランプ氏を大統領候補として認めるのかずっと注目されていた。
そんな中、やっとトランプ氏を大統領候補者として認めたのは2024年3月だった。力強く支持することもなく、 “It should come as no surprise that as nominee, he will have my support.” という発言だった。数か月間が経過し、やっと両者の会合が実現できた。トランプ氏とマコネル議員が握手できたのは、議会選・大統領選で団結しようという象徴的な出来事だ。 トランプ氏はマコネル上院議員に対して批判的な態度はとらず、むしろ良好な関係性を示して賞賛するような発言もあったようだ(※1)

しかし、上院議員全員が参加したわけではない。
弾劾裁判で賛成に投じたマカウスキ議員、コリンズ議員、ロムニー議員、カシディ議員は予定があわないとのことで欠席した。ロムニー議員は年内で引退するが、残り3名の議員は来期以降も務めることになる。連邦議会選挙で、上院共和党は勝てたとしても1~2議席のはずなのでこの2名の議員の投票で法案を左右していくことになるかもしれない。

2. 女性の権利をめぐる民主党の戦い

2024年2月にAL州の州最高裁が凍結保存した胚を胎児と認める判決をしたことで、連邦政府として体外受精を保護しようと民主党は試みている。実際に体外受精で子供を授かったダックワース議員は、「To protect and expand nationwide access to fertility treatment, including in vitro fertilization(S.4445)」を提出し、シューマー上院院内総務は動議打ち切り投票を実施したが、48票しか入らずに60票を越えず否決された(※3)
そもそも民主党も2名欠席しているくらいだ。本気で動かそうというよりはアピール法案の要素が強い。民主党の2024年総選挙戦略の1つとして、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康・生命の安全の権利)を強く打ち出している。
2022年はRoe vs. Wadeが覆った直後に中間選挙を迎えたので、この戦略は効果があり、上院選では多数党を死守できた。2024年も引き続きこの選挙戦略で民主党は進めている。

3. 共和党グレイブス下院議員が引退表明

債務上限問題の交渉役であった1人であるグレイブス議員が引退を表明した。一番の要因は、最高裁の判決をうけてLA州の選挙区割りが変更してしまったことだ。 (※4)
債務上限問題を交渉したマッカーシー元下院議長は既に引退し、マクヘンリー下院議員(下院金融委員会委員長)、グレイブス下院議員の全員が2024年末で議会を去ることになってしまった…。

4. 中国に対してダライ・ラマやチベット指導者との関係修復を促す法案を上下院で可決。Promoting a Resolution to the Tibet-China Dispute Act

先月に上院で可決していた中国に対してダライ・ラマやチベット指導者との関係修復を促す法案(Promoting a Resolution to the Tibet-China Dispute Act)を下院も可決した。米国のチベットに関する政策変更を伴うもので、法案にはっきり「 チベットが古代から中国の一部であるという主張は不正確」「 チベットの人々の宗教、文化、言語、歴史、生活様式、環境を抑圧している。 チベットの人々の歴史、文化、信仰、言語などのアイデンティティに対する要求に応えるよう中華人民共和国に奨励する」と書かれた(※5)

6月第三週の米最高裁の判決

1. 経口中絶薬ミフェプリストンの継続使用が認められた「 Food and Drug Administration v. Alliance for Hippocratic Medicine 」

原告適格の要件を満たさないとし、判事は全会一致で訴えを却下した。FDAが承認した経口中絶薬ミフェプリストンによって、 原告(中絶反対の医師と市民団体)は不利益を被ったわけではないと結論づけられた。
「Alliance for Hippocratic Medicine」は、反中絶団体である薬による中絶を連邦レベルで全面廃止を目標とする団体だ。 FDAが承認したミフェプリストンを無効とし、事実上、全米での使用禁止を求めて2022年11月に訴訟を起こした。 Roe vs. Wadeが覆ったDobbs v. Jackson’s Women’s Health Organizationの判決がでた後に訴訟を起こした。

これで全面的にミフェプリストンが使えるかというと、そうではない。 十数州で、中絶はほぼ完全に禁止されており、ミフェプリストンも違法だ。AZ州は郵送を禁止している。 LA州では、経口中絶薬のミフェプリストンとミソプロストールを規制薬物とし、処方箋なしに所持することを犯罪とする法律を可決した(※6)反中絶団体がこれで諦めるわけはない。引き続き訴訟を起こしてくると思われる(※7)

2. バンプストック規制を違法と判断した「Garland v. Cargill」

米最高裁は賛成6、反対3で、連邦政府には銃の付属品を規制する権限がないと判断した。2017年にラスベガスのホテルからコンサート会場に向けて銃乱射事件があったことを受けて、トランプ政権はバンプストックの販売・所持を禁止した。
その規則を受けて、TX州の銃販売店の店主がこの規制に異議を唱え、政府を相手取って提訴を起こしていた。
今回の判決で、バンプストックを装着した半自動小銃は、連邦法が定める機関銃に相当しないとの判断を示した。トーマス判事は多数意見で、司法省のアルコール・タバコ・火器および爆発物取締局がその権限を「逸脱」したと書いた。
いわゆる保守派といわれる判事は禁止するのは明らかに議会の役割だと意見書で書いた(※8)

何度も書いているが、 保守派判事と呼ばれる最高裁判事たちの6名は、始原主義(originalism)をとっているということだ。合衆国憲法に明言されている権利はあるかどうか。なければ、連邦議会・州議会で決めなさいということになるわけだ。 トランプ前大統領によって任命された判事ではあっても、トランプ時代の規制に対して賛成・反対するという視点ではない。
とにかく今の保守派判事は、 始原主義(originalism)なのだ。

※1: Trump touts unity after meeting with Republicans
McConnell, Trump bury hatchet with eye on GOP takeover
Johnson, Trump, GOP plot ambitious agenda hinged on total control of government
※2:He Helped Trump Remake Global Trade. His Work Isn’t Done.
※3:Senate Republicans block legislation to codify IVF access
※4:Graves decides not to run after Louisiana district redrawn
※5:Promoting a Resolution to the Tibet-China Dispute Act
※6:Abortion pill ruling: What to know and what comes next
※7:Supreme Court preserves access to abortion pill
※8:Supreme Court strikes down bump stock ban